日本人の心風景、『まんが日本昔ばなし』DVD発売迫る

 遊び疲れた土曜日の夕方、母が作る夕食を心待ちにしながら、テレビに目を向けるとでんでん太鼓を手にし、龍の背にまたがる子どものアニメーション映像と共に、「ぼうや~、よいこだ、ねんねしな」とメロディアスな曲が流れてくる。『まんが日本昔ばなし』(TBS系)のオープニング曲は、1975年から94年まで映像と曲、共に変わることなく流れ続けた。

 初回放送された「こぶ取り爺さん」「笠地蔵」以来、19年間で1,468作にも及んだ『まんが日本昔ばなし』。最高視聴率は33.8%を記録し、アニメ日本歴代ランキキングでも「タッチ」(フジテレビ系)、「ドラえもん」(テレビ朝日系)を抑え第5位にランクインしている。放送10周年となる85年には、映画作品として新美南吉の『ごんぎつね』が作られた。この作品は劇場公開こそなかったが地方の公民館、ホールを周り上映されたという。

「桃太郎」「カチカチ山」「花咲か爺さん」など、誰もが聞いたことがあるメジャーな昔話から、桃の節句でお酒の中に桃の花びらを浮かべるきっかけを作ったとされる「蛙の恩返し」(香川県)、親孝行の大切さを伝える「養老乃瀧」(岐阜県)、欲に目がくらむと身を滅ぼすという教訓を伝える「宝の下駄」(島根県)など、地方に脈々と伝わる民話や伝承を日本全土に広めるのに一役買った番組だった。そして何より、”親孝行””悪銭身に付かず”といった、世の理(ことわり)が自然な形で盛り込まれることで、世界的に評価されることも珍しくない「日本人の規範」の土台を作ることにも貢献した番組でもあったはずだ。

 また、『家政婦は見た』シリーズで知られる女優・市原悦子と、映画からアニメ声優まで幅広く務める俳優の常田富士男の2人がナレーションを務め、声色を変え、数十種もの登場人物に声をあてている。市原の「まあ、まあおじーさん」や常田の「こりゃーたまげたあ」などのセリフは、昔話を子どもに読み聞かせをしている際に自然と出てくる方もいるだろう。

 放送終了から17年が経つが未だ人気は衰えるところを知らず、放送された中から120話が収録されたVHSは、放送終了後から05年まで発売された。全60巻にも及ぶVHSの売上累計は、約430万本を数える。しかし、放送話数・全1468話から考えると、まだ10分の1も収録されていないため、TBS開局50周年を記念した今回のDVD化に、全話収録を期待する声も大きい。

 ちなみにエンディングは、オープニングとは異なり7回ほど変わっている。「おしりを出した子一等賞」や「でんでんでんぐりがえってバイバイバイ」といった、”意味が分からないが記憶に残る歌詞”も印象的なエンディングなど、家族や職場で『まんが日本昔ばなし』談義に花咲かせてみるのもオツなものかもしれない。
(文=明日春人)

まんが日本昔ばなし DVD-BOX 第1集

 
OPを歌う「花頭巾」は未だ誰か明かされていない。


まんが日本昔ばなしDVD-BOX 第2集

 
エンディングは「にんげんっていいな」がベストか?


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