アリスJAPAN『AV黄金期・復刻レビュー』第8回

「一途な恋」それは、若菜瀬奈だけに与えられる背番号だと、思う

『復刻 一途な恋 若菜瀬奈』品番:PDV-084/監督名:溜池ゴロー/時間:60分

 2010年12月18日。いま、どこかの空の下で踊っているのかな? それともお母さんになって、子どもにうんと愛情を注いでいるのかな? 両方であってほしいけど。

 この復刻版のパッケージで若菜瀬奈の顔を久しぶりにじっと見てそう思った。いま。

 愛に飢えているくせに恋愛は下手くそ。へえ。なんか俺とクリソツじゃん。

 そんなことを思いながら、僕は目の前にいる若菜瀬奈から、生い立ちから始まって少女時代、昨日今日の恋愛、仕事、いろんな話を聞いてはメモしている。

 場所は西武新宿線の野方駅に近い、新青梅街道沿いに今もあるデニーズ。当時、クルマ持ちだった僕は真っ赤なシビックで乗りつけた。お互い、近所で話せる場所ということでこの場所になった。若菜瀬奈は僕より少しあと、歩いてここにやってきた。

 この午後は何年前だったのだろう。ウィキペディアをあたる。あった。若菜瀬奈の作品リスト。1998年か。何年前だ。iPhoneアプリ「電卓少女」で引き算。12年前だった。まぁそれぐらい前だよねぇ。

 「アトラス21」というAVメーカーがあった。単体AV女優が出演するシリーズ『AVアイドル伝説』を若菜瀬奈で、となって、長谷川九仁広監督によるこのシリーズの脚本をずっと書いていた僕がまぁ当然のように指名されてまずは監督面接、中野にあったアトラス21の会議室で若菜瀬奈と会った。この時が初対面だったのかな? 記憶が曖昧なのだ。

 たしかなことは合計4回だ。若菜瀬奈と会った回数は。雑誌「URECCO」、「オレンジ通信」のインタビュー、そしてアトラス21でのこの監督(および脚本家)面接の席。若菜瀬奈の半生を再現ドラマを入れつつ綴る作品に。これがメーカーからの要望だ。

「じゃあすみません、後日、脚本を書くために一度どこかで会って、お話を聞かせて下さい」

 というわけで野方のデニーズ。以上、計4回。

 インタビュー仕事が先だったのか監督面接が先だったのか。雑誌がもう手元にないので分からない。でも、僕にとっては順番はどうだっていい。デニーズで2人きりだった。若菜瀬奈からおすすめ自炊料理「ヒジキとニンジン炒め」のレシピを聞いた。冷蔵庫の匂いを消す方法を教わった。所帯染みた素顔に触れた。癒されていた。すごく今僕は癒されていると実感していた。あれ、当時これに該当する「癒し系」って言葉もう使ってたっけ。それもまぁどうだっていい。たしかにあの日あの午後、一緒だった。この作品を執筆中の何日間だけ僕のJ-PHONE の「わ行」に若菜瀬奈の番号があった。この事実は永遠に消えることはない、と好きな映画『欲望の翼』調に独白してみました。

 若菜瀬奈は小学校4年の時に両親が離婚。一度は母親についたが、中学に入ってからは親戚の家に引き取られる。親の愛情には恵まれなかった。

「ほんと、飢えてたのね、愛情に」

 そう言った。恋人は何人かいたけれど、自分から「好き」とは今も言えない。嫌われて、友達にも戻れなくなる。それが怖いから、と瀬奈ちゃん。

「優しい人が好きです。私の恋愛って、障害が多いんです。遠距離か、不倫か」

 こうやって聞いた話をもとに、虚実入り交じったドキュメント『AVアイドル伝説 若菜瀬奈』(1998年)の脚本を書いた。彼女の19本目の作品だ。

 そしてこの『一途な恋』で、若菜瀬奈は1997年5月30日にデビューした。監督は溜池ゴロー。今では「熟女はワシにおまかせ!」の熟女専門監督だが、この頃はアリスJAPANの可愛らしい少女系もおまかせだった。僕もそれから何本かアリスJAPAN溜池ゴロー作品の脚本を書かせてもらった。

「ゴローちゃん、若菜瀬奈ってええね! むちゃ可愛いね。今年の1位だよ!」

 デビュー作を見た僕はそれぐらいの勢いだったのだ。

「ああ見えても不器用なコなんだよね」

 と溜池ゴロー。僕にはじゅうぶんに「不器用」に映っていたんだけどね。フェラチオにしても、男優とのコミュニケーションにしても「初々しい」よりも不器用に映った。ここに、この少女の可愛らしさがある。かけがえのないうぶな季節が記録されている。

 このたび見返しても、その感想はVHSテープで見た当時と変わるわけがない。

「18歳です。AVに出ようって決めたのは、スカウトされたというのもあったけど、撮ってもらいたいって思ったんです。みんなに見られると綺麗になれるって思って。肌や体型を維持しなくちゃって意識するから。綺麗になりたいから」

 男優とセックスが出来るから、という出演動機は2番目3番目くらいのものだった。

 布団の上で表情が固いまま、初めて男優に身を任す。相手役は今はすっかりメタボ親父役が板についた吉村卓。スリムな好青年の彼に、すがるように、不安を消して下さいとお願いするようにぎゅっと彼を抱きしめて、果てるまで、そんなセックスだった。

 そうそう、復刻リモザイク! 肛門丸見えですヨ先輩。菊座、かなり綺麗。僕も初めて見
た。感動したです。

 中盤は椅子に拘束されてのバイブ責め。デビュー作からこれはかなりの驚き。若菜瀬奈が希望したのか? M女だったのか? 今では確かめようもない。最後はベテラン男優の日比野達郎に抱かれ、すこぶる未開発な少女の喘ぎを見せて果てる。ひとこと、

「なんて可愛いコ!! なんて綺麗なコ!!」

 そしてきっと、迷いの中での仕事だったはずだ。でも、安心した。その後、吹っ切れたのだろう。だんだんと髪も長くなり、エロチックな女へと変わって行った。性表現というものも巧くなった。けれども、最後まで、遠くを見ているような瞳は変わらなかった。

 どこを見ていたのだろう。

 デビュー3年目の1999年。若菜瀬奈はAVを引退した。

 その年、僕はピンク映画のシナリオを書いた。女子校生物だ。AVメーカー「マルクス兄弟」の社長兼監督でもある柴原光に頼まれて書いた。助監督の不手際で完成試写会が僕には知らされず、この映画はいまだに見ていない。だいぶ後になってから、この映画のタイトルが『若菜瀬奈 恥じらいの性』(大蔵映画)だと分かった。

「そっか、AVを引退した若菜瀬奈があの主役をやったんだぁ」
 
と。彼女が唯一出演した映画となった。

 瀬奈ちゃん、将来の夢ってあるの?

「ストリップダンサー。海外で。できればアメリカがいいな」
 
人間、絶対にひとつは夢を叶えなくちゃね。デニーズの帰り道、ハンドルを握りながら。それは祈りに似た気持ち。
(文=沢木毅彦)

◆アリスJAPAN『AV黄金期・復刻レビュー』詳細はこちら

『一途な恋 若菜瀬奈』

 
ユースケ・サンタマリアとの交際報道もありましたね


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