上野オークラ劇場閉館!! すべてはピンク映画の未来のために

「上野オークラ劇場」クロージングイベント 7月31日(土)より
左:『新怪談色欲外道 お岩の怨霊四谷怪談』1976年(小川欽也監督)
右:『怪談バラバラ幽霊』1968年(小川欽也監督)

 昭和27年の創業開始から、長きにわたり男たちを魅了してきたピンク映画の名門「上野オークラ劇場」が今夏、閉館を決めた。ノスタルジックな昭和の香りを強く残すオークラ劇場の閉館に、長年のピンク映画ファンからは「残念」の一言が聞こえてきそうだが、今回の閉館は建物の老朽化にともなうもので、改装を施し、新館をオープンする予定となっている。劇場のブログからは、新館オープンへの並々ならぬ意気込みが感じられる。

「設備はシネコン顔負けで、特にオールドファンには優しいバリアフリー。
清潔感ある明るいエントランスやロビー。
快適な広い座席に、イベント用の設備。
極めつけは難聴者用設備の完備。
ファンの皆さまに喜んで頂ける設備をずらっと並べ、
オープンに向けて素晴らしい施設が着々と出来上がっています。
ピンク映画館としてこんなに素晴らしい環境はまず無いと自信を持って言えます!!
間違いなく全国NO.1のピンク映画館が誕生します!!」(上野オークラ劇場ブログより)


 アダルトビデオやインターネットの普及によって、決して順調な経営が約束されているわけでもないピンク映画館だが、今なお根強いファンは確実にいる。日本映画界の一時代を築いた名作ポルノの数々に魅せられた男たちは、なんだか悶々とした夜を過ごしたいとき、ピンク映画館に足を運ぶ。過去名作のリバイバル上映には、営業中のサラリーマンも仕事を切り上げやってくる。さらに、最近では女性客も多いという。

 2004年にはアートフィルム系の単館映画館として有名な渋谷の「ユーロスペース」がピンク映画『たまもの』(新東宝)を再上映した。通常作品の上映時では、男女比はほぼ同数程度という話だが、この『たまもの』上映時もそれは変わらなかったという。もちろん、「ユーロスペース」という場所柄が女性客には、足を運びやすいという場所であったということはあるが、今年の3月には、山形でも女性による女性のためのピンク映画上映会が行われている。実際、新館オープンを控えたオークラ劇場も、女性客の取り込みにはずいぶん力をいれている。8月4日の完全オープンを前に、同1日には女性限定イベントを行うというのだ。

「女性の皆さま、新しい映画のジャンル開拓として、
ピンク映画を観てみませんか!!
おまけに、「ピンク女優のセキララトークショー」と題して、
女優さんを3名お招きしてトークショーも行っちゃいます。
なんと、司会・聞き手も女性です!!
ですから、女性目線でのココでしか聞けない話がてんこ盛りです。」(同ブログより)

 ユーロスペースを皮切りに、全国のミニシアター系映画館では次々にピンク映画が再上映されている。さすがにピンク映画を専門で流す映画館には足が向かないが、エロスに興味津々な女性客にも、ちょっとおしゃれな芸術感覚を味合わせてくれる単館映画館なら、悶々とした気分を気軽に解消しに行ける。男と違って、まだまだ女性にとっての性風俗というものは発展途上だ。女性のための性風俗、そんな未知の世界の扉を、未来のピンク映画が開けてくれるのを願う。

 なにしろ、30年以上も日本のエロス界に女王として君臨した愛染恭子は、ヌード引退に際し、「もっと早くM嬢をやってみたかった」なんて明かしている。エロスとはなんと奥が深いのだろう。

 「草食男子」なんて言葉がはびこる今の時代、もしかしたら新しいエロスの境地を見い出すのは女性たちなのかもしれない。

(文=峯尾<http://mineomineo.vox.com/>)

『たまもの』

 
いまおかしんじ監督の最高傑作!


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