AVライター・雨宮まみの【漫画評】第6回

笑いあり涙ありチンコ同士の絡み合いアリ! 衝撃のBL作家、語シスコの新刊2冊同時リリース

katarushisuko.jpg『こどもの時間』『おとなの時間』(両方とも作者/語シスコ 発売元/マガジン・マガジン)

 人生、男なら一度は大きな賭けに出なきゃいけない時がある。のかどうか知らないが、どうやら女である私にも、大きな賭けに出なきゃいけない時が来たらしい。「メンズサイゾー」という男性向けの媒体で、よりによってBL作品(※ボーイズラブの略。本物のゲイ漫画とは違い、描き手も読み手も女性がほとんどであることが特徴。最近はゲイの方にも愛読者がおられるという話も聞きますが、要するに男同士で愛し合ったりイチャイチャしたりセックスしたりする作品のこと)を紹介するとは……! おっとそこの貴男! ブラウザを閉じるのはまだ早い! 武士の情けで紹介文だけでも最後まで読んでみてはくれまいか。BLに対する概念が変わるかもしれない衝撃的な作家さんなので、知るだけ知っておいても損はしないと思いますよ。

 BLの概念を変えるかもしれない作家……その名は語シスコ(かたるしすこ)先生。い、いやブラウザ閉じないで! 「戻る」をクリックしないで! デビュー当時から名前負けしない作品の内容には驚かされっぱなしだったが、なんとこの度、4年ぶりの単行本『おとなの時間』と『こどもの時間』を同時刊行するという快挙! ご丁寧なことにオビにも「BL大好きな方以外にも、自信を持っておすすめします!!」と書いてあります。

 語シスコ作品の何がいいのか、筆舌に尽くし難いその魅力をがんばって言葉にしてみると、まずものすごく「凝縮度が高い」ということがあります。1話の完成度が高いというのとは少し違っていて、1つの話に詰め込まれている要素が非常に多い。シリアスな恋愛ものとして読める部分もあるのに、その前フリ部分やカラミの最中は間断なく絶妙な笑いのネタで埋められている。しかもBLとしてのエロ要素もしっかりあるわけで(全作セックスシーンアリ)、普通その3つを全部一緒にやれないだろうという芸当を語先生はスピード感のある展開でテンポ良くグイグイ、いとも簡単にやってのけているわけです。笑いに引っ張られて切なさや恋愛の真剣味が薄れることもなければ、シリアスな方向に引っ張られて笑いが邪魔になるということもない、絶妙のバランスです。

 そして独特の言語センス。勃起の表現ひとつ取っても「お前のつくしん坊が春の息吹を感じてるぞ」「今にも胞子をまき散らさんばかりに膨れ上がっとる松茸みたいじゃ」「おや……君の小蛇も元気にカマ首をもたげはじめたぞ…」「いっ、いいにょろー!」(※注・上記2つのセリフはヘビが身体を這い回るプレイ中のものです)「この野郎!! ヤメテと言いつつ簡易テントみたいに簡単におっ勃てやがって」「ご子息が窮屈そうだぜ」……。昔の官能小説の比喩をこういう形で新たな地平へと昇華させたのは語先生の真骨頂ではなかろうか。

 こんなにアホな言葉遣いなのにもかかわらず、エロいところはしっかりエロいし、読後は切ない余韻が残る作品も多く、ゲイの片思いや嫉妬、独占欲などのテーマも頻繁に取り上げられていて、笑いながらも感情移入してウルッと来る作品が多いのもスゴイです。男性が読んで感情移入できるのか微妙にナゾですが、「一度ぐらいは読んでみたい」と興味をお持ちの方はぜひお手に取られることをオススメ致します。これをBLのスタンダードだと思われてもちょっと困るんですけど、でも読んでほしい……。1冊税込み900円で禁断のBL世界を冒険してみませんか?

 

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