エロアニメの歴史の中で、いまでは考えられないような作品がある。あのスタジオジブリの名作『天空の城ラピュタ』をオマージュしたような『バルテュス ティアの輝き』だ。
キャラデザなど、どことなくエロアニメっぽくない牧歌的な雰囲気がないだろうか。これだけでも十分にジブリっぽいのだが、これにはエロアニメの歴史が深く関わっている。
アニメにおけるはっきりとした性描写は、1960年代後半から70年代の初頭にかけて手塚治虫の虫プロダクションが制作した『千夜一夜物語』『クレオパトラ』『哀しみのベラドンナ』の「アニメラマ3部作」で観ることができる。その以前には、1932年に制作された『すゞみ舟』が存在する。同作品は日本初のエロアニメと位置付けられている。
しかしこれらの作品はエロアニメというよりも、アート表現としてヌードや性的描写が用いられている。いわゆるエロ目的の元祖は、1984年にリリースされた中島史雄原作の『雪の紅化粧』や『少女薔薇刑』である。そこから『仔猫ちゃんのいる店』やオリコンビデオチャートのランクインするほど人気を得た『くりいむレモン』シリーズが誕生し、本格的に日本エロアニメ史が始まった。
1984年以降、90年代まではエロアニメ創世記といえるが、すでに『仔猫ちゃんのいる店』のMIUのような、現代エロアニメヒロインの基盤となるようなキャラクターは生まれていた。しかしストーリーは超展開が連続するSFや、鬱ゲーのような救いようのない作品が多かった。そんな中、AVメーカーとして知られた宇宙企画が世に放ったのが『バルテュス ティアの輝き』だった。
『バルテュス ティアの輝き』は、『リヨン伝説フレア』に続くエロアニメ第2弾として制作された。『リヨン伝説フレア』は典型的なSF凌辱もので、触手中心によるエロアニメだった。しかし、28分という短い尺の中で無理のないストーリー展開と高品質の作画が評価され、スマッシュヒットを記録している。全体のクオリティは『バルテュス ティアの輝き』にも引き継がれたが、ジャンルはSFからアドベンチャーファンタジーへと変わった。触手も登場しない。
中でも大きな変化を遂げたのはキャラデザだ。『バルテュス ティアの輝き』は、ジブリと勘違いしてしまいそうなほどあの慣れ親しんだ作画なのである。世界観も非常に近く、『天空の城ラピュタ』のような、超古代文明を背景とした牧歌的な世界が舞台である。
以下があらすじだ。
平和なルジュテ村の浜辺に、自由を求める少年ユードが打ち上げられた。ユードは少女ティアに助け出され、運命的な出会いをする。お互い惹かれあっていくが、ユードは巨大工場都市「バルテュス」のレジスタンスだった。後にレジスタンスが起こした反乱事件にティアが巻き込まれてしまう。ティアはバルテュスの支配者モーロックに囚われ、それを知ったユードは救出に向かうが……
エロアニメとしての見どころは、ヒロインであるティアの凌辱シーンのみだ。エロシーンはぽつぽつあれど、きちんとフィニッシュまで描かれるのはそのワンシーンしかない。
全体的な雰囲気と物語の流れがとにかくラピュタっぽいので、エロを目的として観ると物足りなさを否定できない。さらに敵のドンであるモーロックの声が、玄田哲章氏である。エロアニメから彼の声が聞こえるなんてなんとも不思議な気分だ。
今作においてはエロアニメの古典として楽しむのが正解だろう。ゴリアテのような飛行戦艦や、ラピュタのロボット兵みたいなものも登場する。ムスカのようなキャラや、宮崎駿監督みたいなキャラまでも登場するから驚きだ。もちろんラピュタの飛行石にあたる石も登場する。実際スタジオジブリのスタッフが何人か参加していて、後にそれを知った宮崎駿監督はそのスタッフらを解雇したという話だ。
声優は玄田哲章氏の他に、『幽幻道士』シリーズのテンテン役で有名になった高田由美氏(ティア)や関俊彦氏(ユード)がスタッフロールにそのまま掲載されている。いまでは考えられない。それだけでもエロアニメの歴史を物語る貴重な作品だ。
(文=穴リスト猫)
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・バルテュス ティアの輝き