バブルとガイジンと萌芽 混沌の時代 ~ニッポンの風俗史#12~  

安い、うまい、早いとは違う難波流の牛丼屋


 1989年1月、昭和天皇の崩御によって、時代は平成へと移り変わった。

 その年、新たに登場したのがダイヤルQ2だった。NTTのQ2サービスを利用したツーショットダイヤルで、自宅がテレクラになった。

 ただし、その利用料は非常に高額で、家庭内はもちろん、会社の電話でこっそりQ2を利用して、問題になることも少なくなかった。

 また同じ年、大阪でノーパン牛丼屋が話題となった。『ちち乃屋』というその店は、60分に一度ショータイムがあり、ノーパンに小さなエプロンだけ身につけた女の子が、床に並んで横たわった客の頭を、ゆっくりまたいで牛丼を運んだり、ステージ上でウエイトレスが吹き矢で風船割りをするなどのショーを行なっていた。もちろん、吹き矢を吹くのは口ではない。

 客は、1000円のチップでそのショーを楽しんでいたようだが、ここまで読んで既視感を覚えた人もいるはずだ。どこかで一度同じような店を思い浮かべたと。

 風俗ライターの伊藤裕作氏によると『ちち乃屋』は、テレビ番組で扇情的なノーパンダンスを披露して有名になった、あのノーパン喫茶『あべのスキャンダル』だと書いている。

 つまり、ノーパン喫茶が23時になると看板を取り替えて、ノーパン牛丼に変わる二毛作商法ということ(笑)。大阪らしいユニークな商売だとは思うが、すでに改正されていた新風営法をどうすり抜けていたのか、そっちもかなり気になるのだが…。

 そして、伊藤氏が書いていなかった『ちち乃屋』の牛丼の値段だが、調べたところ、1杯2000円説、5000円説、1万円説、食べ放題で5000円説など様々出てきた。

 さすがに2000円は安いと思うが、1万円は高いかもしれない。今、どこかにノーパン牛丼屋があるとしたら、いくらなら食べに行くだろうか?

 

チンチンでもマ◯コでもない新しい性器


 大阪でノーパン牛丼が話題になっている頃、東京・池袋でも新しい風俗が誕生していた。ファッションヘルスと似て非なる「性感マッサージ」だ。

 その違いとは、性感マッサージは、ファッションヘルスのサービスに加え、女の子が客のアナルに指を挿入して、前立腺をクイックイッとマッサージしてくれるところ。その技術は、手コキやフェラとは一線を画した快感があるという。

 アナル好きな筆者の知人は、


「上手な女のコに前立腺やってもらうと、昨日オナニーしたばかりなのに、信じられないくらいの量の精子が出るんだよ!」


 と、その気持ち良さに熱弁をふるっていた。

 元祖は池袋の『アイ美療』だと言われ、元ファッションヘルスで働いていた経営者が、泌尿器科で前立腺肥大の治療受けたところ、その気持ち良さにハマってしまい商売にしたという。

 その後、「性感ヘルス」という呼び名で店舗が増え、筆者はかなり多くの店と女のコを取材した。が、性感店なのに前立腺マサージはやったことがないという女の子や、爪を長く伸ばした女の子すら少なくなかった。

 アナルという第三の性器の発見やSMクラブの周知、そしてニュー風俗による深層性癖の覚醒は、その他にも新しい風俗を生んでいた。そのひとつが、「医療プレイ」と呼ばれるハード風俗である。

 「医療プレイ」は、前立腺マッサージにとどまらず、浣腸やフィストファック(拳挿入)などで男性の性欲や好奇心を満足させるもの。SMと同様に射精は必須ではない。

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