美咲かんなエッセイ:ふしだらな気持ち「人生そんなことだらけ」

 美しい花には棘がある――。誰もが備える多面性を表現したこの言葉。特に男を惑わす美女には危険な一面がある、という男の自戒的な意味を表しているわけだが…。勝手に舞い上がって棘が刺さってしまうのは男のせいとも言える。美女は美女で悩むことも多いのだ。AV女優・美咲かんなも悩み多き美女のようで…。美しくもどこか陰のある彼女が、素直な気持ちをふしだらに綴る。

 

美咲かんな

 

美咲かんなエッセイ:ふしだらな気持ち「人生そんなことだらけ」

 桃の季節も終わり、街で見かける広告には芋や栗、秋鮭などが目立つようになってきた。

 食いしん坊は季節の移り変わりも旬の食材で把握している。一部の食材以外は年中スーパーなどで手に入る時代だが、旬の食べ物は安く手に入る上に美味しさも段違いだ。測る術がないため調べてはいないが、なんと栄養価も違うらしい。仕事や人に合わせるとき以外は、そのとき食べたいと思ったものを我慢せず食べるのが私の生き方であり、生き甲斐だ。

 旬にはとらわれずに自由に食べるものを選んでいたけれど、最近になって旬の味覚を楽しむということを覚えた。

 ある日、用事のついでに秋の味覚のモンブランでも…と、カフェへ寄ったときのことだ。

 店内は割と空いており、頼んだものがくるまで読書をしようと文庫を広げると、少し離れた席の男性グループの会話が耳に入ってきた。

 「三十路までは勉強」とか「まだ方向性を探りながらでいい」とか、お互いの仕事の話をしている。盗み聞きではない。静かな店内に対し、そこそこのボリュームだったのだ。他人の意識の高い会話に感心しつつも、ちょっと自分はついていけなさそうだなあと自己嫌悪に陥る。

 

「あなたの将来の夢は何ですか?」

 

 幼稚園で、小学校で、中学高校大学で、何度聞かれてきただろうか。この質問をされる度に世の全てが嫌になる。それは今でも変わらない。生まれてこの方、夢というものを抱いたことがないのだ。

 「人生は夢だらけ」だと!? おいおい嘘だと言ってくれよ…と。教育の一環としてこの問いを投げかけられた場合は、大人が納得してそれ以上突っ込まれることがなく、なるべくそっとしておいてもらえそうな答えを用意した。

 それはお花屋さんだったり会社員だったり…。ときには花嫁などと半ば自棄になって回答していたこともある。どれも本心ではなく、毎回悩み絞り出した答えだ。

 

 人生設計について何も考えたことがないわけではない。考えてはいるが、昔から自分が何かしら仕事をしている姿というのを想像してみてもしっくりこないのだ。今でこそ知識や経験の不足が想像力の欠如に繋がっているのだろうと思うが、あまり差が開いていないであろう幼い頃からこの有様である。

 学校の先生になりたいとかダンサーになりたいとかいう、言い続けてきた夢を実現させた同級生も多い。将来の夢について聞かれる度に、取調室で自白を迫られている被疑者のような気持になっている私とは大違いだ。一応言っておくが、取調室に入る羽目になったことはない。あくまで妄想である。

 将来の夢というものが存在しないまま、大学在学中にこの仕事を始めてからずっと私はAV女優だ。

 学生時代にいくつかアルバイトを経験したものの、何をしても要領が悪くしっくりくるものはなかった。アルバイトだけではなく、趣味や日常に潜むちょっとしたアクティビティなどあらゆる物事において何をしても上手くできず、常に人並み以下という人生を送ってきた。

 そんな状態で何のビジョンもないまま、「ええい!一生に一度の人生だ!どうせなら人がやらないようなことをやろう!」と、思い切ってこの仕事を始めたというわけである。

 過去回でも触れているが、これは多くある理由のうちの一つで、掘り下げると長くなるのでそれは小出しにしていきたい。始めたばかりの頃はアルバイト感覚だったが、業界の人やファンの人たちと接していくうちに徐々に仕事に対する意識は真剣なものへと変わり、結果的にこの仕事は過去に自分で選択した何よりも長く続いている。AV女優になっていなかったらお芝居や文章を人に見てもらえるチャンスもなかっただろうし、多くの人に応援してもらえることのありがたみを知らないままだったと思う。

 「この仕事をしていなかったら何の仕事をしていただろうか」との質問に、自信をもって話せる答えにはまだ辿り着いていない。セカンドキャリアについても同じである。やっぱり私はその質問の度に世の全てが嫌になるだろうし、胸を張って答えられない自分を恥ずかしく思う。こんな自分は嫌だけれど、AV女優という仕事を頑張っている自分のことはちょっとだけ褒めてあげたい。

 結局、モンブランは食べなかった。下調べもせず歩き回って吟味することもせず行き当たりばったりで入ったカフェにはモンブランがなかったのだ。

 私って、どうしていつもこうなのかしら…と嘆きながら唯一頼んだコーヒーはすごく苦かった。よし決めた。今年の秋はお気に入りのモンブランを見つけるのが夢ということにしておこう。

美咲かんな

【美咲かんな】
生年月日:1994年7月3日
スリーサイズ:T158・B85・W58・H88(cm)
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世の中は相変わらず某感染症が猛威を振るっており、日々不安と闘いながら生活している。自分の健康面に関してはもちろんだが、感染症というのは「自分さえよければ」が通用しない。人と関わることは元々少なく、帰属意識というのも強い方ではないが、こんなことで社会との繋がりを感じてしまうとは実に皮肉だ。

 6月某日、私は第3回目のエッセイの内容をどうするか悩んでいた。連載が始まってひと月も経たないというのに、既にスランプ気味である。どうにか絞り出した文章を打っては消し打っては消し、思い悩んでいると突然テレビから「うどんは青春の味」という力強い言葉が聞こえてきた。

 気温が30度を超える日も多くなった東京は、いよいよ夏本番という雰囲気である。外出自粛もまだ心掛けてはいるが、仕事で外に出る機会は増えた。プライベートでは家族で出かけることがほとんどで車移動も多いが、時間の管理と駐車場に困らないという理由から仕事や用事で動く場合は公共交通機関を主に利用する。以前は環境問題の観点からか「公共交通機関を使いましょう」という呼びかけをよく耳にした気がするが、最近は感染症対策もあって、真逆の風潮である。

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