安保法案だの消費税アップだの世界同時株安だのと、日本を取り巻く問題はいろいろとあるだろうが、なんだかんだ言ってもこの日本という国はおしなべて平和である。
筆者が愛用している出会える系サイトにおいて、まだ見ぬパートナーを募集する女性のなんと多いことか。その活況を目にする度に、この日本という国に生まれた幸運をただただ神に感謝するばかりだ。
そんなワケで、今日も今日とて日課である出会える系サイト巡りをしていると、筆者の股間にドキュンとくる書き込みを愛用サイトの一つである【ワクワクメール】で発見したのであった。
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気持ち良く汗をかきませんか(ハート)
半年近くエッチしてないので、正直タマってます。
こういう遊びはあまり慣れていないんですが、
優しくリードしてくれる年上男性を希望します。
見た目に自信がないので、
それでもいいよっていうオジサマからの連絡お待ちします。
今新宿にいるので、
すぐに待ち合わせできたら嬉しいかな。
書込み日時:9/0* 19:11
受付メール数 :0/15
♀クミコ(若葉マーク)
30代前半
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30代前半の脂の乗った女性が肉体を持て余しているようだ。しかも自ら「タマってます」とカミングアウトまでしているではないか! なんて可哀そうな女性なのだろう。この世に女として生を受けたからには、セックスの快感を楽しまなければ「嘘」である!! こんな女性を放っておいて平気な顔をしていられるトコショーではない。
優しくリードすることも得意だし、見た目に自信のない女性のマンコをバター犬のように舐めることも筆者の十八番だ。そう、このクミコちゃんなる女性が要求している条件にすべて合致しているではないか!! そんなワケでさっそく彼女へのアプローチを開始したのであった。
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こんばんは、クミコさん。
新宿でWEBデザイナーをしているショーイチ、36歳です。
さきほど仕事が終わったところで、丁度ヒマしてました。
とにかく女性に尽くすのが大好きな私ですが、
仕事が忙しくてここ数カ月ほどセックスレス状態です。
優しいくらいしか取り柄のない私ですが、
ぜひクミコさんと楽しく気持ちのいい時間を過ごしたいです。
以上、検討してもらえたらめっちゃ嬉しいです!!
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こんなファーストメールを送信したところ、ものの5分で返信が届いてあっさりと約束が成立してしまった。いやぁ、世が泰平な証拠だろう。見ず知らずの男女がメールを数通やりとりしただけでセックスするために待ち合わせするだなんて、治安の高いこの日本ならではのシステムといえるかもしれない。
待ち合わせ場所は西武新宿駅南口のファストフード店の前だ。ソワソワしながら待っていると、ほぼ時間通りにクミコちゃんらしき人影がツカツカと筆者に近づいてきた。もとい! ズシンズシンと地響きを立てながら筆者に近づいてきた。
さ、佐々木健介?
元女子プロレスラー北斗晶の旦那でもあり、G1 CLIMAXで二度の優勝も果たしている元プロレスラーの佐々木健介風の物体がそこに!!
身長171センチである筆者とさほど背の高さが変わらないものの、体重60キロの筆者の1.5倍ほどの目方がありそうだ。髪の毛の長さのおかげで辛うじてそれが女性だと判別できるレベルである。
急遽、筆者の脳内で緊急会議が催される。と、同時に全会一致で「NO!」の決断が下された。エンジェルトコショーもデビルトコショーも珍しく意見が一致したのだ。
ズシンズシンと近づいてくるクミコちゃんに正対し、開口一番「ごめんなさい」と頭を下げかけた時のこと。
ガシっ!
な、なんとクミコちゃんがいきなり筆者の手を握ってきたのである。筆者の左手を、彼女の両の手が包み込んだ格好だ。
このままフィンガーロックでもされようものなら、大声で叫んでしまうことだろう。だが、クミコちゃんは筆者の手首をヒネりあげるでもなく、しっかりと握ったまま語りかけてきたのである。
「ショーイチさんですよね?」
「あ、は、はい」
「良かったぁ、優しそうな人で」
「う、うん」
「あ、さっき【ワクワクメール】で約束したクミコです」
「あ、う、うん」
「ホント、良かったぁ。怖そうな人だったらどうしようって思ってたんですぅ」
「そ、そう」
「今日はよろしくお願いしますね」
ただでさえ細い目のクミコちゃん。それがまさに破顔一笑ってな具合で顔を歪めたせいでますます細くなっている。しかしながら、そんな目の奥に宿る眼光はかなり鋭い。獲物を前にした肉食獣のようである。
想像してみていただきたい。己より遥かに立派な体格の女性に手を握られ、迫られているシーンを。
運動音痴で人様に誇れるのは逃げ足の速さくらいのトコショーが、こんな場面で相手を怒らせようものなら死を覚悟するしかないだろう。
新宿のど真ん中ゆえ一通りは多いはずなのだが、筆者は白いマットの上に立たされた気分でもあったのだ。
で、できない!! 小心者の筆者には、この物体のご機嫌を損ねるような真似はできそうにない。それゆえ、脳内会議の結論を無視して応じることしかできなかったのだ。
「こ、こちらこそ。よ、よろしく」
「あ、もしかして緊張してます?」
「う、うん」
「私もですよぉ。じゃ、さっそく行きます?」
「あ、う、うん」
筆者の左側に周り、筆者の左手の手首部分を握るクミコちゃん。きっと利き手が右手なのだろう。彼女の握力は相当なもので、そう簡単に離れそうもない。
もっともこの時の筆者の気分は肉食獣に喉元を押さえられた小鹿のようだった。そう、既に諦めの境地に達していて、ただただうつろな目をして歩を進めるしかなかったのだ。
「どのホテルにします?」
ホテル街に到着すると、クミコちゃんがそう問うてきた。筆者はあたりをグルっと一瞥し、先日使用したばかりのレンタルルームのほうを指さすのが精いっぱいであった。
個室に入ると、「じゃ先にシャワー浴びてきちゃいますね」とシャワールームに入るクミコちゃん。筆者はポツンと布団の上に座って、状況判断につとめることに。
レンタルルームの料金は先払いしてるから、このまま逃げてもいいんじゃね? 幸い直アドも知られてないから逃げ切れるんじゃね? いや、逃げるつもりなら最初にゴメンナサイしとけって話だよな? 彼女の迫力に押されたからとはいえ、ここまで来て逃げるのはいくらなんでも酷くないか? いや、そもそも勃起できるかって話だよな? ずっとふにゃチンだったらそれはそれで彼女の怒りを買いそうだし…。
膝を抱えながら悩んでいると、クミコちゃんがシャワールームから出てきてしまった。
おいおいおいおい、しっかりマンコ洗ったのかよ? そう突っ込みたくもなるが、もちろん言いだせるワケもない。
「じゃ、ショーイチさん、シャワーどうぞ」
そう促されると、筆者は「う、うん」と頷くことしかできなかった。
シャワーを浴びながら覚悟を決めるしかないと悟ったトコショー。いつもは数分もせずに身体を洗い終えるのだが、この時は5分近く時間をかけてしまった。何事も即決即断が信条の筆者なので、こんなにもウジウジ悩んでしまったのは成人してから始めてのことだったのだ。
シャワーを出て、目を瞑りながら念入りにバスタオルで身体を拭く。
もし、いまこのホテルが火事にでもなったら自然な流れで逃げられるのでは?
覚悟を決めたはずなのに、未練がましくそんな妄想に逃げようとするトコショーなのであった。
そうこうしているちに身体を拭き終わってしまった。もうこれ以上時間を稼ぐことは無理だろう。
バスタオルを腰に巻き、瞼を半分閉じて薄目状態にしながら出入口付近に向かう。そして照明パネルを操作して、室内を真っ暗にする。
真っ暗にしたことで、揺らいでいた決意がようやく固まる。
今日は人肉でできたオナホールでオナニーするだけだ!
そう己に言いきかしたトコショーなのである。
「じゃ、俺に攻めさせてね」
主導権を握る旨をクミコちゃんに伝えたのにはワケがある。下手にディフェンス側に回るとなにをされるかわかったものではないからだ。身体の自由を奪われ頸動脈を締め付けられようものならアっという間に失神してしまうかもしれない。下手にマグロでいたら、生チンポをマンコに飲み込まれるかもしれない。生で挿入しようものなら、後日「赤ちゃんができちゃった」などと言われるかもしれない。松井珠●奈クラスの可愛い娘に懐妊を告げられたら大喜びするだけだが、クミコちゃん相手にそんなこと言われようものなら人生バッドエンドだ。
それゆえ、渋々とオフェンス側に回ることにしたのであった。