アートとエロの境界に佇むアーティスト・口枷屋モイラ! 中毒性の高い“妖艶でポップな世界観”

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――東京に出て来たのは?

「大学院への進学がきっかけです。当時は研究職につきたくて服飾の勉強をしていました。ただ、東京に来たのはちょっとしたカルチャーショックでしたね。京都に生まれ、ずっと同じところで育ったので、ものすごく解放感がありました。やっぱり京都ってどこか閉塞的なところがありますから…。ちょっと派手なファッションをするのにも人の目が気になって抵抗がありました。それに比べて東京は本当に自由だと思います。様々な種類の人たちが思い思いの好きな格好をしていることがとても新鮮に映りました。東京に来てからコミケの存在を知り、そこで初めてサークル参加をし、コスプレをするようにもなりましたね」

――そのころのコスプレというのは?

「オリジナルでした。コスプレというとアニメとかゲームとかの二次創作が王道だと思うんですが、あまりそういうものに触れてこなかったため、自分が考えだしたオリジナルキャラクターの格好をしていました。口枷屋モイラは『オリジナル口枷シリーズ』の中のキャラのひとつだったのですが、ネットで公開した当初から評判がよく、イベントなどで着用して行く度に周囲の方からの反響がありました。一気に知名度が広がったのが2010年に参加したデザインフェスタですね。ひとりで参加して自分のやりたいような空間を演出したところ思った以上のリアクションがあり、モイラとしての活動を続けるようになりました」

――コスプレイヤーとしてスタートしたわけですか。

「自分でコスプレイヤーとかモデルだとかを自称したり思ったことはないんですけども(笑)。キャラがひとり歩きするような感じで、周囲からもだんだんそう呼ばれるようになりました。自分ではずっとカメラマンって言っているんですけどね…。ただ、口枷屋モイラっていうキャラが認知されて、さまざまなイベントに参加するようにもなりましたし、グッズなんかも広まるようになりました。おかげでいまの活動ができています。他人からどのように捉えられ、どう呼ばれても気にしないというのが当初からのスタンスです。他にもネットアイドルだとか現代アートだとも言われることがありますが、いずれについても否定も肯定もしません。ただ、『被写体が自分という割合の多いカメラマン』だということは間違いないですね」

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――アヒル型の口枷がトレードマークみたいなものですよね。

「あの口枷は色んな方からご好評頂いています。発売してから10年近く経つのですが、いまだに根強い人気で常に完売状態です。口枷っていうとSMのイメージが強いですけど、可愛い女の子がファッションアイテムとして着けてくれるようなものに変えたいという思いを込めて作ってます。テイストとしては秋葉原系の“萌え”と原宿系の“派手可愛い”とフェチの要素をミックスしている感じですかね。そういったジャンルの融合がほかにはないオリジナリティを出せているのかもしれません」

――写真にはかなりエロティックなものが多いですよね。

「ポップで可愛いものが好きですけど、やっぱり私の感性はフェティッシュやエロティックなものでできています。アートやエロの境目っていうのはなかなか難しい問題ですけど、そこに上下の差はないと思います。自分の作品に関していえば、やっぱり“エロい”って言われるのは単純に嬉しいですね。作りたいものと市場がマッチングしたというか(笑)。上辺だけの美しさや可愛さから一歩踏み込んだ“カラダと脳”で刺激を感じるような作品を作りたいと考えています。アートからエロを排除するだけではなく、両方の魅力が最大限に引き出せるような作品を目指したいですね」

――それは楽しみです。

「数年後何をしているかはわかりませんが、何十年先でも作り手であるとは思います。ただ、はっきりと決まったわけではありませんが、今後は自分が前に出るのは少しずつ控えることになるかもしれません。いっとき二代目・口枷屋モイラを探していた時期もあったのですが、なかなか見つけることができませんでした。このまま口枷屋モイラを続けていくかどうかは、正直、わからないところです。徐々に普通のカメラマンとしての活動にシフトチェンジしていく可能性もあります。どんなカタチであれ、私の作り出すものに興味を持って頂けたらとても嬉しいですね。今後も“萌え”と“可愛い”と“フェチ”な女の子をテーマにした作品を発表していきたいと思っていますから、よろしくお願いします!」

 

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 クリエイターとしての決意を語ってくれたモイラ。今後、彼女の名前やキャラクターが変わることもあるかもしれないが、フェティッシュでポップな作品は送り出してくれそうだ。いや、表現者であり続けることを強く願う彼女は、きっといまのオリジナリティに満足することなく次々と新しい世界観を切り開くことだろう。10年後の口枷屋モイラがいまから待ち遠しい。

【口枷屋モイラ】
フォトグラファー/デザイナー
独学で写真を学び、2013年よりフリーランスとして活動。
主にセルフポートレートの手法で制作。グッズは「ヴィレッジヴァンガード」などで販売中。
代表作『口枷少女モイラちゃん』『アヒル式口枷Piyoco』など。
京都府出身・東京都在住。
http://selfer.net/moira/

【2015年 活動情報】
4月8日「月刊水中ニーソ」トークショー出演
5月4日「文学フリマ」参加
5月5日「COMITIA112」参加

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