「梅毒の特効薬は死者の脳ミソ」密売人が逮捕された事件


 また、迷信を勘違いして「美談」となったケースもある。明治25年、東京・麹町に住む16歳の少女は、父親が難病に苦しんでいたために神社への参拝を繰り返すほどの親孝行だったが、ある夜に「丑年生まれの女の生き血を飲ませれば、父の病は治る」と夢のお告げがあったため、自らの腕を切り裂いて父親に流れる血を飲ませようとしたとのことだ。幸い、当の父親や家族のものに止められたものの、彼女は縫うほどの傷を負ってしまったという。

 ちなみに、梅毒については明治43年にドイツの科学者パウル・エールリッヒと日本の細菌学者である秦佐八郎によって特効薬のサルバルサン606が開発されており、すでに不治の病ではなくなっていた。にもかかわらず、こうした迷信が根強く残っていたのが現実なのだ。

 こういう事例を紹介すると、「昔のことだから」と笑う人が少なくない。だが、では現代ではそうした迷信は完全に消えうせただろうか。今日、さすがに人骨やら人間の脳といったものは見かけなくなった。だが、わけのわからない数多くの健康食品が、あたかもいろいろな病気や症状に効くかのようなふれこみで、高値で販売されている。病院で受診し医師の指示で薬をもらえば、わずかに費用で済むような症状に、何倍、何十倍もの値段の健康食品を購入しているのである。こんな状況では、明治や大正の人たちを笑えないのではなかろうか。
(文=橋本玉泉)

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