「でんぱ組.inc」が一酸化炭素中毒で搬送、業界で撮影事故が繰り返される理由


 今回は全員が軽症で済んだが、一酸化炭素中毒は決して侮れない。2010年に三重県で発生した発電機が原因による室内事故では3人が死亡する惨事になっており、そうした死亡事故はたびたび起きている。今回も下手すれば命にかかわる事故になってもおかしくないところだった。

 アイドルの負傷といえば、昨年10月にパチンコメーカーのイメージキャラクターを務めるガールズユニット「FUJI★7GIRLs」の事故も記憶に新しい。パチンコ演出用の映像撮影中に泥に見立てたセメントをかぶり、それが原因でメンバー7人全員が皮膚疾患等を発症。いずれも軽症で済んだものの、メンバーたちは「髪の表面が溶けてブラシも通らなくなった」として髪を短くしなくてはならなくなり、さらに約1カ月間の休養を余儀なくされた。また、今年5月にはAKB48の木崎ゆりあがバラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)のプロレス企画でリハーサル中に左手首を骨折し、全治3~4週間のケガを負っている。

 アイドル以外でも、2012年9月にスギちゃんが『クイズプレゼンバラエティーQさま!!』(テレビ朝日系)の収録中に約10メートルの高さからプールに飛び込んで胸椎骨折の重傷(全治3カ月)を負った騒動などタレントの負傷は多い。同年2月にお笑いコンビ「ずん」のやすが『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の収録で大ケガしたケースでは、スキー場のゲレンデをゴムボートで滑走。勢い余って停止用のスロープを乗り越えて約4メートル下の小屋のトタンに腰を強打し、一時は全身麻痺の状態にまでなった(約10か月後にテレビ復帰)。

 このような重大事故が頻発してしまうのはナゼなのか。

「不況の影響で予算が削減され、近年の現場は『安く・早く』が求められている状態。突き上げを喰らっている制作スタッフはスケジュールに合わせて撮影を強行しなくてはならず、そのシワ寄せで最も大事な安全面がおろそかになってしまっている。今回の事故も地下で発電機を使ったらどのような危険があるか、普通なら分かるはずだった。しかし、照明がなければ撮影できない状況を上に押しつけられれば、現場は発電機を稼働させなければならず、正常な判断力が失われていってしまう。これだけ事故が頻発していれば安全面を徹底強化しなければならないはずですが、テレビ局などクライアントからの制作サイドへの要求の厳しさは変わらず、事故が起こった時に初めてコトの重大さに気付くという愚行が繰り返されている」(制作会社関係者)

 取り返しのつかない事故が起こってからでは遅い。業界は撮影効率や目先の儲けよりも安全を重視するという、当たり前の感覚を取り戻してほしいところだ。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops

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