チュート徳井がパンティ被ったのは失敗か!? それとも芸人魂か!?

tokui0321.jpg※イメージ画像:「桜」/ファンキーモンキーベイビーズ/DREAMUSIC

 今月20日、ピン芸人日本一を決める『R-1ぐらんぷり2012』(フジテレビ系)の決勝大会が行われ、決勝進出者12名の中からCOWCOWの多田健二が初優勝を決めた。これを受けてネット上では、多田の優勝を祝う言葉と共に、案の定というかお決まりのように、準優勝に輝いた、まさに新星といえるスギちゃんを称える声が飛び交っている。そして同じように騒がれているのは、決勝の審査で自らの一票が勝者を決めることになった木村祐一に対する「事務所贔屓」という批判だ。

 「お笑い」というものの性質ゆえに、下された勝ち負けの判断に非難が集まるのは仕方がないことだろう。しかし優勝した多田のネタは、誰よりも万人に受けるネタであったのは間違いない。そんな多田が優勝したことは、やはりテレビというものが、不特定多数の人々に向けられているものだということを証明したといえる。そうしたテレビの事情を踏まえた木村の判断は間違っていなかったと思える。

 一方で、テレビのそんな性質を忘れたかのような特殊なネタを披露したのが、チュートリアルの徳井義実だった。まず、決勝大会の一回戦で見せたヨギータは(編注:外国人落語家のキャラクター)、ギリギリの下ネタと不可解さがちょうど笑える位置にあり、完璧だった。テレビで見せる久しぶりのヨギータというのもタイミングが良かったのだろう。しかし、順当に勝ち上がった徳井だが、その次に披露したネタは最低だった。

 視聴者の多くが一回戦で見せたヨギータの再来を期待していただろう。それだけの余韻を残すほど徳井のヨギータは面白かった。しかし彼はそれを裏切り、スーツ姿で漫談を始める。つまり、それはヨギータの何倍も面白いネタでなければならない。裏切ったのだから、より良いものを見せてくれなければ、視聴者や観客は納得しないからだ。でなければ、「なんだヨギータ見たかったよ」ということで終わりだ。

 自らハードルを上げた徳井は、パンティを被り漫談を披露した。もちろんこのパンティもネタの一部で、それを踏まえた構成も考えられている。しかし、その奇抜なアイデアは、最後まで着地点を見つけられなかった。明らかなネタの選択ミス。彼が最後のステージもヨギータを演じ、一回戦と同程度のクオリティを見せたのならば、きっと優勝したに違いない。そこで疑問なのが、まだまだヨギータのネタはあったはずで、そういった観客の空気や視聴者の視線を感じられないほどの若手ではない徳井が、なぜパンティを被るというネタを選択したのかということだ。

 彼はきっとそれがやりたかったのだろう。R-1という芸人の晴れ舞台、そしてテレビというメディアの、しかもゴールデンタイムという時間帯で。彼はパンティのネタをそうしたメジャーステージでやることに、特別な意義を見出したのではないだろうか。そしてその意義は、すでに売れている徳井にとって優勝するということよりも価値のあることなのではないか。
 
 徳井は、パンティを被るというネタをすることで「芸人ここにあり!」ということを訴えたかったように思う。惨敗だった徳井のR-1決勝のネタは、芸人魂というものを世の中に提示する目的で披露された気がする。しかしなぜ今彼はそれを断行したのだろう。

 SMAP以降、テレビバラエティに進出する男性アイドルグループは後を絶たない。TOKIO、嵐、関ジャニ∞、Kis-My-Ft2など、例を挙げればキリがない。また、それに合わせて、芸人のアイドル化というのも、男前グランプリなどというものの存在から分かるように顕著なものといえる。特に徳井などは、ハンサム芸人の筆頭格だ。つまり、今のテレビバラエティ界は、芸人とアイドルという存在の境界が非常に曖昧になっている。そして、徳井は、自分がアイドル的扱いを受けるゆえ、そのことに危惧を抱いていたのではないだろうか。彼はこう思っているに違いない。「オレは芸人だ!」と。だから彼はR-1の決勝という舞台でパンティを被ったのだろう。

 一般的には、R-1の決勝で見せた徳井のパンティネタには、大きな批判があるだろう。しかし、彼は満足しているのではないか。決してアイドルにはできないネタをやったのだから。そんな徳井には陰ながら拍手を送りたい。そしてもちろん、並み居る独特の世界観を武器にする異色芸人たちに、万人に受けるネタで堂々と戦い、勝利した多田も最高だった。また、決勝に残ったスギちゃんには、もう一皮向けてブレイクしてもらいたい。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

『チュートリアリズムIII』

 
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