オトコの避妊……「パイプカット」という選択肢

pipecut0117.jpg※イメージ画像 photo by unkamengifts from flickr

 「避妊」とは、ある意味不思議な行動である。セックスとはそもそも、生殖目的で行なうもの。そう考えると、避妊とはセックス本来の目的とは全く真逆の行動ということになる。そのため、避妊を「セックス快楽のみに重点を置き、生物学的な目的を無視した行為である!」と非難する人や団体も存在する。そういった意見もごもっともだが、経済的理由や社会的理由から、望まぬ妊娠を避けることは、私たち現代人にとっては必要不可欠な行為であろう。

 さて、では避妊の手段についてだが、おそらくほとんどの男女が「コンドームの着用」と答えるだろう。最近では、ピルの服用も、有効な避妊方法として注目されているが、いかんせんコンドームに比べると若干費用がかかってしまう。また、体重の微増などの副作用を気にする女性からは、ピルに抵抗があるという声も少なからず挙がっている。対してコンドームは、手軽に利用できるというメリットがある。ただし、万が一破けたら……というリスクを心配する人や、ゴム装着時のビミョーな空気に萎えてしまうという人もいる。

 では、コンドームやピル以外に有効な避妊方法は何か? というと、パイプカットが挙げられる。一般男性に、「パイプカットについてどう思うか?」という質問を投げかけたところ、パイプカットを知らないと答えた人が何人かいたことにまず驚かされた。「禁煙のことか?」と聞き返してくる若者もいたが、煙草の増税に敏感なご時勢である、という事情が影響しているのかもしれない。

 改めて、パイプカットとは、睾丸から精嚢への管を閉塞する外科手術のことである。パイプカットを行なっても、精液が無くなるわけではないので、今までどおり射精を行なうことは出来る。要するに、精液に精子が含まれなくなるということ。

 ピルが女性主体の避妊方法であるのに対して、男性主体の避妊方法といえるだろう。著名人にも、大橋巨泉氏や角川春樹氏、松方弘樹氏、さらにはサッカーのロナウド選手などが、パイプカット手術を受けていることを公言している。

 一般人にとって、まず気になるのは費用である。病院によっても異なるが、10万弱という破格の値段を掲げているところもあれば、30万近くかかる場合もあるようだ。決して安いとはいえないが、ゴムの肌触りが苦手だったり、性生活の充実目的で、パイプカットを検討しているアラサー・アラフォー男性もちらほら見受けられる。

 次に、「手術によって、性的能力が低下するのでは?」という点を危惧する人もいるだろう。これに関しては、実際のパイプカット経験者に話を聞いてみた。

 四国某県に住む資産家のAさんがパイプカットに踏み切ったのは、「浮気」が原因だった。といっても、浮気がバレて、妻にパイプカットを強要された……ということではない。確かに、妻以外に、何人かの愛人女性を囲っていたのは事実。そのうちの1人がAさんの子どもを妊娠し、出産した。Aさんがその事実を知らされたのは、なんと数年後。というのも、妊娠が発覚する前に、その愛人女性と別れたため、事実について全く知らずにいたのだという。愛人女性のほうからも、認知や養育費を求めてくることがなかったので、気付いたのが数年後だったとのこと。遊び人のAさんも、さすがに深く反省したそうだが、今後も女遊びはやめられそうにない。そこで、2度と同じ過ちを繰り返さないため、パイプカットを決断したのだという。

 前述の件だが、パイプカットによって、性的能力が低下することはいっさい無かったという。むしろ、コンドームの煩わしさから解放されたことによって、むしろ性欲旺盛になった気がするとのこと。もちろん、良いことばかりではない。手術前の麻酔注射は当然痛かったというし、手術後は数日間入浴不可、セックスも1カ月ほど控えなければならない。さらには数カ月後、精液に精子が残っていないか確認する術後検査を受ける必要がある。それなりに面倒は伴うが、コンドームの使用に不快感が生じるという人や、この先子どもを望むことはないという人は、避妊手段のひとつとして検討する価値は大いにあるだろう。

 なお、数年後に「やっぱり子どもが欲しくなった!」という場合について。切断した精管をつなぐ手術は確かに存在するそうだが、修復は難しいという。決断の際は、充分に熟慮を重ねて頂きたい。
(文=菊池 美佳子)

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