【テリー・天野のメンズ的映画評 第10回】

AV顔負けのモロ出しハードSEXと残虐性で賛否両論の『アンチクライスト』!! ガチンコで挑む性と暴力

antichrist_top.jpg©Zentropa Entertainments 2009

 激しい情交の最中、最愛の息子を事故で失ってしまった夫婦。そのショックで精神的に深く病んでしまった妻を救うために、セラピストの夫は「禁断の行為」である身内のセラピーに手を染めてしまう。

 催眠療法の結果、彼女の病気の根源が”エデン”と呼ばれる山奥の小屋にあると知った彼は、彼女を”エデン”へ連れて行く事を決意する。だが癒しの効果を求めて訪れた大自然も、その驚異が彼女の精神を更に蝕んでいき、やがて二人にとって、悪夢のような事態をもたらしていく……。

 衝撃のデビュー作『エレメント・オブ・クライム』(84年)をはじめ、カンヌ映画祭で審査員特別グランプリを獲得した『奇跡の海』(96年)や、かのビョークを主演に据え、同映画祭パルムドール&米アカデミー賞主題歌賞ノミネート(および鮮烈なビョークの志村けんライクなドレス姿)で話題を呼んだ『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00年)など、デンマークを拠点に数々の話題作や問題作を生み出してきたラース・フォン・トリアー監督。『アンチクライスト』は、そんな彼の『マンダレイ』(05年)以来久々となる新作公開だ。

 これまで数多くの話題作、問題作を世に送り出してきたトリアーだが、特に本作に関してはその賛否両論ぶりは凄まじい。初上映となったカンヌ映画祭では、あまりの暴力&アンモラルな内容に失神者が続出し、また母国デンマークでは大ヒットを記録すると同時に、批評家の情け容赦ない批判を浴びせられるなど、世界中がこの映画で喧々諤々である。だてにアンチクライスト(=反キリスト)を名乗ってるワケではないのだ。

antichrist_02.jpg衝撃作を演じ切ったシャルロット・ゲンズブールとウィレム・デフォー
©Zentropa Entertainments 2009

 そんな本作で特に印象深い演技を見せているのが、主役を務めたシャルロット・ゲンズブール。

 セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンという大スターを両親に持ち、自らも14歳にして主演作『なまいきシャルロット』(86年)で映画界を席巻。女優として、また父親ゆずりの音楽センスで、歌手としても近年その実力を余すところなく発揮している。そんな彼女がこの『アンチクライスト』で、かつての”なまいきシャルロット”とは違った意味で”なまいき”っぷりを発揮するのだ。

 なにせ冒頭から、ウィレム・デフォー扮する夫とのハードなセックスシーンで度肝を抜くのだが、こんなモノはまだまだ序の口。徐々に精神に支障をきたしていく彼女の病みっぷりは、主に性的な方向に突出する。夫に暴力的に犯すように懇願しつつ、大自然の中にマッパで飛び込んでオナニーまで始めてしまうところなど、下手な芸能人AVよりよほど抜けそうなエロメスぶりだ。

 しかも、そんな段階で彼女の崩壊がとどまるわけもなく、夫にのしかかって逆レイプのうえ、下半身丸出し(当然”なまいきシャルロット”の”なまいき”な部分も丸出し)のまま、スティーブン・キングの『ミザリー』(90年)や三池崇史の『オーディション』(99年)もかくやの凶行に及ぶヤンデレぶりよ。そりゃカンヌで失神者も続出するだろう。

 さらには逃げる夫を半狂乱になって追い回したかと思えば、連れ戻してオナニーの道具に使おうとするわ、その凶行はもはや誰にも静止不可能。それでいて、かっての美少女時代の面影は残ったままなので、観ている側の背徳感もまさにアンチクライスト。オー、ジーザズ……。作品自体が色々と物議を醸したにもかかわらず、彼女自身はカンヌで女優賞を受賞したのも大変うなずける。

 そんな彼女に振り回され、悲惨な目に遭う夫を演じたデフォーも、文字どおり体を張った演技を魅せつける。デフォーといえば、ミニシアター系の小品から『スパイダーマン』(02年)のような大作までジャンルを問わず意欲的な活躍を見せるが、本作でもシャルロット相手にケツからチン毛まで丸出しで、演技者としてのポテンシャルの高さは素晴らしい。かつて『最後の誘惑』(88年)で悩めるキリストを演じ、宗教関係者の間で物議を醸したこともあったが、よもや反キリストを掲げる作品に出ようとは……。もちろん、トリアーはそれを狙っているんだろうが。

antichrist_03.jpgホラーが苦手な人は覚悟して……
©Zentropa Entertainments 2009

◆『アンチクライスト』http://www.antichrist.jp/
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:シャルロット・ゲンズブール、ウィレム・デフォー
製作年:2009年
劇場:新宿武蔵野館、シアターN渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか
公開日:2011年2月26日~
上映時間:104分
配給:キングレコード+iae
※R18+

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『ダンサー・イン・ザ・ダーク』以前

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