体制瓦解は日本AVから!?  デジタル時代の北朝鮮の庶民生活とは

 10月15日に、韓国の新聞・中央日報が報じたところによると、独裁体制の続く北朝鮮で、日本製のアダルトDVDの普及が社会問題になっているという。北朝鮮当局は対応を練っているものの、それでも北朝鮮の市場では、アダルトDVDが爆発的な売れ行きを示しているのだとか。

 とはいえ、貧困にあえぐ北朝鮮の庶民が、日本製のアダルトビデオを家庭で観賞している、という様子はどうもうまくイメージできないのだが……。

「中国製品の流入もあって、DVDプレイヤーなど、旧型の電子機器の市価は大きく下がっていますね。もちろんそれでも購入できない層のほうが多いのでしょうが、首都・平壌を中心に、少なくない市民が所持していてもおかしくはないですね。北朝鮮が、エリート層の若者を中心に、IT教育を実践している影響も大きいのでは」(在中国ライターの男性)

 また、肝心のアダルトDVDについては、正規品ではない可能性が高いという。

「出回っているのは、ほとんどが海賊盤のDVDかビデオCDで間違いないでしょうね。日本国内から北朝鮮への贅沢品の輸出は禁止されていますが、中国から北朝鮮への製品の流通はほとんど自由ですし、中国の市場では、どこかしこで海賊盤のアダルトDVDなどが販売されていますから」(前出、在中国ライターの男性)

 なお、この現状を問題視する北朝鮮では、国産のDVDだけを再生できるDVDプレイヤーの生産に注力したり、外国産プレイヤーの基板を国産品に取り替えるなどの措置を進めているというが、その効果は限定的とみられる。そもそも、北朝鮮製のDVDしか見られないプレイヤーなんて、現地の人々にとっても、商品としての魅力がないのだろう。

「北朝鮮が独自規格を開発した、という可能性は低いですね。おそらくは、リージョンの設定を、南米などで使われる『4』に変更するだけとか、そういった措置でしょう」(パソコン雑誌編集者)

 DVDの視聴可能な地域を指定する「リージョン」という仕様。現在のところ、北朝鮮にはロシアやインドと同じ「5」が割り当てられているが、これではロシアから輸入したDVDが再生できてしまう。

 DVDのリージョンには1~6の数字があるが、1にはアメリカ、2には日本、3には韓国、5にはロシア、6には中国が割り当てられている。そこで、そのどれでもない「4」を「国産DVD用」として利用すれば、さほどの費用や手間をかけずに、既存のDVDプレイヤーを「周辺諸国のDVDが視聴できない」プレイヤーに改造できるとのことだ。

 ただし、北朝鮮に出回る家電製品の大部分は、中国からの密輸品。さらに、どのリージョンでも視聴できる海賊盤DVDを作成するのは「非常に容易」(前出、パソコン雑誌編集者)とのことで、北朝鮮でのアダルトDVDの流通が止む可能性は低いようだ。

 となると、日本製アダルトビデオは、北朝鮮の体制にどのような影響を与えていくのだろうか。

 現体制の後継者となることが有力視されているキム・ジョンウン氏は、父・ジョンイルのような党内の粛清を繰り返していると噂され、コワモテの党幹部として知られている。それだけに、ジョンウン氏への体制移管後は、「政敵」のみならず「性的」も、国内から完全追放するのでは、と予想できる。

 数多くの矛盾や問題に揺れる北朝鮮。そんな中で、市民が「西側文化」を感じる最大のモノは、アダルトDVDのようだ。当局が強制摘発に乗り出せないのは、党幹部の間にもこの趣味が蔓延しているからではないかと考えることができる。

 アダルトを求める市民による「エロ革命」が起こって体制が崩壊した……というような出来事が、歴史の教科書に刻まれる日が来るのかもしれない。

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