「あの子が処女じゃない!?」オタクの妄想をぶちこわした非処女疑惑 「かんなぎ」につづき「ラブプラス」でも

2010052708top.jpg「ラブプラス×講談社 特設サイト」より

 もはや社会現象となった恋愛シミュレーションゲーム「ラブプラス」が、コナミ公式で漫画化されている。この爆発的な人気に乗じて、「高嶺愛花編」「小早川凛子編」など、コミック5誌で連載が開始された。

 問題になっているのは、「月刊ヤングマガジン」(講談社)で連載中の「姉ケ崎寧々編」だ。寧々さんは「ラブプラス」の3人のヒロインの中でも一番の人気キャラクターで、多くのラブプラスプレイヤーが彼女を恋人にしているという。寧々さんは、主人公の上級生でバイト先のファミレスの先輩という設定だ。容姿、内面ともに大人っぽくて面倒見がいいが、ちょっと天然っぽいところがあるキュートな女の子だ。

 「大人っぽくて、天然で、カワイイ」とは、まさにオトコの理想を具現化したキャラクターなのだろう。オタクたちが命をかけて入れ込むのも分からなくも……ない。しかし、なんと漫画化された作品の中で、そんな寧々さんのキャラクターをぶち壊す発言がみられるというのだ。

 雨が降る中、寧々さんは男子学生とひとつの傘に入り、密着してキスをしながらこう発言した。

「傘の本当の使い方教えてあげる。……ふふっ、少し濡れちゃった」

 二人で一つの傘を使用したうえ、寧々さんが他人に見えないようにキスをしようと傘を横にしたので雨に濡れてしまったようだ。

 この受け取り方によってはビッチにもみえる寧々さんの発言や行動に「ラブプラス」ファンはすさまじい動揺をみせ、インターネット掲示板には怒りのコメントが続出している。

「関係者出て来いよ! こんなクソ漫画が公式ってどういうことか説明しろ!」
「オレと寧々さんの愛を守り抜くため、自宅警備員の名誉にかけて断固として戦う」
「許さない! 一日3回寧々さんでオナニーしてやる!!!」
「くぁあああああああもちつけこんなときは素数を素数を数えるんだけひゃやひゃひゃひゃ」

 プレイヤーは、寧々さんを本当の人間のように、いや本当の恋人として大切に思っているのだ。清純だと思っていた恋人が、実はたくさんの男性経験を持っていたとなれば、混乱するのも無理はない。ましてや、リアルな恋愛経験が乏しい男性であった場合、そのショックは計り知れない。彼らには強固な「処女信仰」があるからだ。それを揶揄した書き込みもある。

「キモイ。鏡見れ」
「中古を新品だと思って買ったやつザマァwww」

 ちなみに「中古」=男性経験のある女性、「新品」=処女を表している。ケッペキな男性たちには男性経験がある=即「ヤリマン」なのだ。「経験豊富な女はイヤ」とは現実でもよく聞くが、とりわけ2次元のキャラクターには処女性を求める傾向が強いのかもしれない。

 以前にもこうした例はあった。「かんなぎ非処女事件」だ。

 「かんなぎ」は2006年から「Comic REX」(一迅社)で連載された人気漫画だが(現在は休載中)、これに登場する美少女キャラクター「ナギ」が処女ではなかったことに読者から抗議が殺到した。

 問題のシーンでは、主人公に思わせぶりな態度を示してきたナギに実はイケメンの恋人がいることが発覚。

「ナギがケガレを祓っていたのは、昔の恋人の残骸を消すためだった」

 など、作中のナギと元カレとの不純な関係を思わせる描写から、ネット上では「ナギが非処女だった!!」と大騒ぎになった。逆上したファンの一人は、2ちゃんねるに原作コミックス全5巻分をビリビリに破った写真をアップし、さらにその実物を作者の自宅に送りつけた、と書き込んだ。まさにアニメ史に残る大事件である。こうした騒動と、作者の体調不良もあり、連載は無期限休止に追い込まれた。

 たかだか「2次元の女の子が非処女」というだけでここまでの騒動に発展するのは、はたからみるとバカバカしくも思えるが、そこには複雑な心理があるという。

「現実で女性との関係をうまく構築できない男性は、女性のことをよく知らない。自分と同じ生き物だという認識が乏しいんです。だから自分の理想が反映された2次元の女性を、まるで女神のように神格化してしまう。それが行き過ぎると、すべての女性をその基準で見てしまう人もいます。鼻毛が生えてるなんて許せない! とかね。処女信仰はその最たるものです。まぁ、自分の愛する女性にとって、自分が最初の男でありたいという願望自体は自然なことですが」(ネットジャーナリスト)

 現実の女の子と違って、決して自分を裏切らないと思っていた漫画やアニメのキャラクターたちの予期せぬ行動に、驚きを隠せない者が多い中、こんな意見もあった。

「僕たちの寧々さんはあくまで僕たちの隣にいる寧々さんだ。これ以上騒いで寧々さんを困らせるな。そんな暇があるなら、お前の腕の中にいる寧々さんを愛してやれ」(ラブプラスヲタ)

 せっかく作り上げた妄想なのだから、制作者であっても邪魔はさせないという熱い決意がうかがえる。ヲタクなりの愛の貫き方をここに見たようだ。合掌。

『かんなぎ 1』著:武梨えり/一迅社

 
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