ヘタカワイイ、バカカワイイ、エロカワイイ......とにかくカワイイ!

プロの漫画家もリスペクト! 伝説のハガキ職人・三峯徹がトークイベントに降臨

199108hm.jpg『漫画ホットミルク』1991年8月号掲載
独特の絵柄、構図、不思議なモチーフに秀逸なポエム。
どこを切り取っても唯一無二の三峯作品

 お世辞にも上手とは言えないイラスト、なのにどんなエロ漫画誌を開いても読者投稿コーナーに載っている……。11月8日、「ハガキ職人の神」と崇められる伝説の人物の投稿活動20周年を記念したトークライブが、新宿のネイキッドロフトで開催された。その人物の名は三峯徹(みつみねとおる)。古くから様々な成年漫画誌の読者コーナーにイラストを投稿しており、エロ漫画読者なら目にしたことのない者はいない、と言っても過言ではないほど、有名な存在だ。知らない人には、素人であるハガキ職人がトークイベントを行うこと自体驚きだろうが、エロ漫画業界では「知らない方がモグリ」という特別な存在なのだ。その独特過ぎる作風と、イラストに添えられた不思議なポエムが強烈な印象を放つため、いつの間にか名前を覚えてしまった読者も少なくない。

 そんな伝説の人物のイベントということで、50人ほどで満員になる会場に75人もの観客が詰めかける盛況ぶり。遠くは秋田、名古屋、大阪から駆け付けた客もいた。当日券完売後も会場を訪れる人が後を絶たず、満員で入れないと知ると残念そうに去っていった。

 さて、イベントはプロの成年漫画家・浦嶋嶺至(うらしまれいじ)とイベント司会でお馴染みのBadGuyナベによって進行。大きな拍手に迎えられて三峯徹が登場すると、「これがあの伝説の……!」と観客の多くが目を輝かせ歓声を上げた。実際の三峯徹は、シャイで腰が低く、いかにも良い人そうな朴とつなキャラクターがにじみ出ており、どこか作風と重なる人柄を思わせた。

 イベントは三部構成で進み、かつてロリコン系成人向け漫画誌『漫画ホットミルク』(白夜書房/廃刊)の読者コーナーを担当していた結城らんな、漫画家・さだこーじ、元AV女優の峰なゆからゲストを交えながら、三峯の20年間の歴史と謎に包まれた素顔に迫るトークが繰り広げられた。

199203hm.jpg『漫画ホットミルク』1992年3月号掲載
以降、徐々に女の子がかわいくなっていきました

 三峯の投稿への目覚めは、成年漫画誌『ペンギンクラブ山賊版』(辰巳出版)の読者アンケートに回答して、大好きな漫画家である森山塔(山本直樹)のテレカをゲットし大変うれしかったことだという。そして1989年に同誌にてイラスト投稿デビューし、以後20年間にわたって各雑誌に投稿するに至ったそうだ。トークでは、驚くべきエピソードが次々と明かされていった。

・最盛期には成年漫画誌を月に40~50冊購入し、100枚以上のハガキを投稿。現在も30誌以上を購読している
・イラストはGペンを使って描き、身体はゼブラ、顔はニッコーとメーカーを使い分けている。制作時間は一枚5~6時間
・今でも、ほぼ毎日ハガキイラストを書いている
・エロ漫画業界では、新創刊した雑誌に三峯徹から投稿があると雑誌が長続きするという”座敷わらし”ジンクスが語られている
・いちハガキ職人であるにもかかわらず、アンチの読者が存在し、「エロ目的で買った読者に下手なイラストを見せたくない」と掲載を断固拒否する出版社もあった
・掲載拒否の雑誌にイラストを載せるため、別名義の丹沢恵三で投稿。しかし、絵柄から一発でバレるのであまり意味がなかった

 一見、ラフなタッチに見える三峯イラストだが、ペンを使い分けたり、毎日相当な制作時間を費やしていたりと、実に真摯に投稿に取り組んでいることがわかる。それでいて作家デビューを目指すわけでもなく、20年間もひたすらハガキ投稿を継続しているのだ。たかがイラスト投稿と侮るなかれ。純粋な情熱がなければ、誰にでも出来ることではない。だからこそ、読者だけでなくプロの漫画家からもリスペクトされており、その証拠に、エロ漫画界の大御所・ダーティ松本や鬼ノ仁(きのひとし)、長谷円(はせつぶら)ら数多くの漫画家から20周年を祝う色紙が寄せられ、会場で公開された。

200806mj-1.jpg『MUJIN』(ティーアイネット)2008年6月号掲載
ほら、最近のイラストはこんなにキュート!

 イベント第二部に登場した峰なゆかは、「小学生の時に廃品回収に出されていたエロ漫画誌を家に持って帰ってこっそり読み、三峯さんの投稿イラストが記憶に残っていたんですが、大人になってエロ漫画誌を読んだら、全く同じ絵で三峯さんのイラストが載っていて衝撃を受けた」と、トラウマにも近い三峯作品との出会いを告白。さらに「男子中学生が自分でズリネタの絵を描いたような純粋なエロさがあり、私の性欲と重なって惹かれるようになった」と、その魅力を語った。

 他の出演者も、各々の言葉で三峯作品へ賞賛の言葉を贈った。

「誰が見ても一瞬で『あの人の絵だ』と分かる描き手は、プロでもそうはいない。アウトサイダーアートとして評価されるべき」(浦嶋嶺至)
「心に爪痕を残す”印象派”」(BadGuyナベ)
「日本のヘンリー・ダーガー」(結城らんな)
「三峯さんの絵ほど、見る者に描き手の気持ちが伝わる絵はない。自分はそれが欲しい」(さだこーじ)

 これらの言葉だけでも、三峯作品には単なるヘタウマ以上の魅力があることがうかがい知れるだろう。また、会場にいたファンの一人は「エロ漫画家はわずかな期間で筆を折ったり、絵柄がコロコロと変わる作家が多いだけに、ずっと同じ作風で描き続ける三峯さんの絵を見ると安心する」と語ってくれた。

200205pk.jpg『ピンキィ』(オークラ出版)2002年5月号掲載
PNに爵位が付いた時期もありました

 終盤には、同人誌とTシャツの即売が行われ、購入したグッズへのサインを求める長い列ができた。ほとんどのファンが実物に会えたことに感動し握手を求めるなど、プロの漫画家並みの人気ぶりである。さらに、来場者には浦嶋嶺至が自腹で制作した超プレミアグッズ「三峯徹イラスト入りエコバッグ」がプレゼントされ、ファンにとって大満足のイベントとなった。

 イベント終了後、三峯氏に20年間も投稿を続けている理由を聞くと

「好きだからです」

 という簡潔な答えが返ってきた。今後も投稿を止めるつもりはなく、出来る限り続けていくとのことで、25周年、30周年のイベントも期待できそうだ。イラストだけでなくマンガ制作にも意欲を見せており、「30周年までには描きたい」と、控えめながら新たな目標を語ってくれた。まさに「継続は力なり」。エロ漫画界の守護神・三峯徹の”伝説”は、まだまだ続いていく。

(取材・文=ローリングクレイドル)

◆三峯徹作品ギャラリー
※画像をクリックすると拡大されます。


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■ネイキッドロフト
東京都新宿区百人町1-5-1百人町ビル1階(西武新宿駅北口1分 / JR新宿東口10分)
http://www.loft-prj.co.jp/naked/

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