初恋のあの娘を一生独占!!

声優・丹下桜の電撃復活にファンが狂喜乱舞!! 合法的現実逃避のススメ♪

loveplus.jpg『ラブプラス』(コナミ)
丹下桜の記念すべき復帰作。

「あなたのハートに、ときめき、ラブ」。90年代中盤、ゲーム内の女性キャラクターを口説いて彼女にする”ギャルゲー”開祖・『ときめきメモリアル』(コナミ)から派生したラジオ番組『もっと!ときめきメモリアル』(文化放送系)の決め台詞だ。

 冒頭からラブレター調の投稿ポエムをパーソナリティが読み上げるという強烈にメルヘンな構成で、ときメモに純情を捧げた中学生・高校生たちは、夜な夜な必死にこの番組を録音して何度も聞き直しオタクへの道を爆走していったという伝説的な番組であった。

 この番組のメインパーソナリティとしてリスナーの絶大な支持を得たのが声優・丹下桜だ。彼女は、林原めぐみ、椎名へきる、國府田マリ子等と共に90年代の声優ブームに乗り、熱狂的なファンを抱えながらも2000年に突然の引退宣言をしてしまった。

 丹下桜が人気絶頂期に引退を決意した理由は今なお明確にされていないが、当時はストーカー被害にあったという説や、事務所との確執、結婚による引退などの憶測が乱れ飛び、多くのファンは悲しみに暮れた。もうアイドルを愛さないと誓う者、他の声優やアイドルに流れた者、それでも唯一無二の丹下桜ボイスを求めてさまよう”丹下難民”になる者、引退時に残した「医療寄りのお仕事でまた活動したいと思います」という言葉を信じて復帰を待ち続ける者と、純真なファンたちは心の傷を抱えながら別々の道を進んで行った。


 そんなファン心を知ってか知らずか、丹下はLittle Seraphという名義で会員制サイトの運営を開始。当初は楽曲配信やライブなど穏当な会員向け活動だったのが、2006年頃から「ボイスヒーリング」やら「絵本作家」という新機軸を打ち出し、古参のファンの間では「新興宗教にハマったのでは?」とハラハラする声も……。

 そんな彼女が、ついに! 声優業を再開すると報告した。これを受けてトラウマを抱えた30代の現役・退役オタクのときめき心に火がつき、悶絶してのたうち回る事態になっている。かく言う筆者もその一人だ!! しかも復帰作は、彼らに一生モノのトラウマを与えた「ときメモ」の開発プロデューサーが手がける、正統後継ギャルゲー『ラブプラス』(コナミ)だというからその興奮も半端ではない。

 ゲーム内でプレイヤーは男子高校生の主人公となり、フルボイスで何万パターンもの会話が収録された3人のヒロインキャラクターと、恋の駆け引きやデートができる(キスもな!)というこのゲーム。さらに、今回は通常のギャルゲーと異なり、キャラクターを口説き落としたらハッピーエンドではない。晴れて彼女になったら、イチャイチャラブラブ期に突入! ソフトのセーブデータが消えてしまうかプレイヤーが死ぬまでゲーム内で恋人として付き合う日常を体験するという、ハードコアな仕様になっている。そのせいで中毒者が続出する事態となりネット上でも大騒ぎだ。

 純真な時期を過ぎ、マンネリな結婚生活や会社勤めを日々こなす僕らにとって、初恋の人・丹下桜を、年下の高校生・小早川凛子として自分の彼女にできる! しかも一生! となれば、忘れていたはずの甘酸っぱくも恥ずかしい記憶が一気に呼び覚まされるのも無理はない。なにしろ僕らにとって青春時代の願望そのものなのだ。

 ネット上の至るところで現在、世知辛い実社会である「三次元」世界から、丹下桜が後輩になって待つラブプラスの架空の所在地・十羽野市(読みは「とわの」=永遠の!)への超次元移住を希望する者たちの声がこだまのように鳴り響いている。そういえば、ラジオ番組「CLUB!ときめきメモリアル」では、丹下桜の「いつでもあなたの心の中に咲いています」というセリフが毎回のように流れていたっけ……。10年の歳月をかけてアラサーおっさんの心の奥深くでつぼみになっていた丹下桜が今年、見事な花をつけた。夢に描いていた青春時代へと我先にダイブしていく僕らの心に、どんな果実が実るかは、誰もまだ想像できない。
(文=久保内信行)

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