「こんばんは、ユミカちゃんかな?」
「あ、はい。そうです」
「さっき、【イククル】で約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「は、はい。こちらこそお願いします」
「早速だけど、俺の顔を見てくれる?」
「え?」
マスクを下にずらし、こちらの顔を全て彼女に見せる。
「どう? もの凄くスケベそうでしょ? ヒいたりしていないかな?」
「ぜ、全然大丈夫です。も、貰っていた写真と同じだと思います」
「ありがとう。でも、無理しなくていいんだよ。もし嫌なら、ここでゴメンなさいしてくれていいんだからね」
「そ、そんなことしません。しょ、ショーイチさんこそ私みたいなので平気ですか?」
「もっちろんだよ。分からないかもしれないけど、さっきから俺はずっとニコニコしているんだ」
「え?」
「ユミカちゃんが素敵だから、嬉しくてニコニコしているってことなんだよ」
「そ、そんな…」
「ここで話するのもアレだから、歩きながら話そうか?」
「は、はい」
新宿アルタ前からホテル街に向かって歩き始める。
それにしてもデカい。それとなく彼女の足元を確認すると、ほとんどヒールのないスニーカーのような靴を履いていた。
それでも筆者より拳ふたつ分くらいは背が高いだろう。こちらの身長は171センチなので、ユミカちゃんの身長は180センチ近くあるのかもしれない。
これだけ大きいとコンプレックスに感じてしまうのも当然かもしれない。隣を歩く彼女は背を丸め、窮屈そうな感じで歩いている。これもコンプレックスの成せる業だと思われた。
当たり障りのない話をしながら歩を進めるふたり。うっかり身長の話題にならないよう気をつけながら、こちらが喜んでいる雰囲気を演出する。
筆者はコンプレックスの塊みたいな人間だ。それゆえ、女性が抱えているコンプレックスにも敏感なのである。
あえて相手がコンプレックスに感じてる部分を褒めるという作戦も成り立つだろうが、出会ったばかりのタイミングでは失敗する可能性が極めて高い。
一番確実なのはその話題に一切触れないということだろう。
徐々に打ち解けてくれた様子のユミカちゃん。趣味はアニメ鑑賞だと教えてくれたり、派遣社員として働いているということも教えてくれた。
そうこうするうちに目的地のラブホテルに到着。室内に入り、マスクを外すユミカちゃん。
か、可愛いじゃねえかっ!!
ユミカちゃんの顔は、女子卓球選手の石川佳純っぽい感じだった。角度によっては女優の水川あさみに似た雰囲気もある。
おしゃれにはあまり興味がなさそうなユミカちゃんだが、もう少しそっち方面に気を使えば引く手あまたの美女に化けそうな雰囲気もある。
「凄く綺麗な目をしてるね」
「え?」
「じっと見ていると吸い込まれちゃいそうだよ。よく目を褒められたりするんじゃない?」
「そ、そんなこと言われたの初めてです」
「じゃあ、今まで出会った男性が全員鈍感だったんだよ。とっても綺麗で素敵だから自信を持っていいんじゃないかな?」
「あ、ありがとうございます」
身長の話題は一切持ちださず、彼女の趣味や仕事の話で盛り上がる。そしてホテルに入って10分くらい経過したところで彼女にシャワーを浴びてくるよう指示を出す。
その後、入れ替わりで筆者もシャワーを浴び、室内の照明を少しだけ暗くしてベッドインすることになった。