阿部定が最初ではない…夫の局部をえぐり取って殺そうとした妻たち


 また、明治45年(1912)5月9日、30歳の人妻が自宅で熟睡していた同じく30歳の夫のペニスと睾丸をナイフで切り取る事件が発生している。原因は、やはり夫の浮気癖だった。夫は病院に搬送され、危篤状態で治療を受けた。

 このほかにも、痴情関係などによるペニス切断事件は現在までに数多く発生している。『事件犯罪大事典』(東京法経学院出版)によれば、昭和57年(1982)に名古屋でスナック店員が殺害され局部が切り取られた事件までに、実に51件の同様の事件が起きているとのことである。

 こうした数々のペニス切断事件を見ていくと、阿部定事件がいかに特異であったか、ほかの同種の手口による事件と比べて、似ているようで実際にはまったく内容が違うものであることを、改めて実感せざるを得ない。
(文=橋本玉泉)

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