ホステスとキャバ嬢、ホストクラブとホスクラ 似て非なるお水の世界


◆高級クラブに反撃したキャバクラ

 かたやキャバクラの誕生は80年代だ。テレビ番組から生まれた女子大生ブームや素人アイドルがそのヒントとなった。これがネオン街に新たな業種を生み出すことになったのだ。女子大生パブや素人パブなどのアマチュア社交業がバブル期にキャバクラとして進化したのだ。

「キャバクラを生み出し、低料金、明瞭会計を打ち出したのは、高級クラブの台頭に低落を余儀なくされていたキャバレー関係者なんです。高収入を求めるホステスたちを高級クラブに持っていかれ、アマチュアホステスを使わざるを得なかった彼らが、時流を捉えて復活を図ったのです」

 キャバクラの営業システムや料金システムが、時間制、現金会計といったキャバレーシステムに極めて近い理由でもある。

「水商売まるだしのプロホステスでなく、アマチュアをセミプロに留めたところが、キャバクラの成功の理由でしょう。80年代後半から90年代にかけて、キャバクラがネオン街を席巻します。キャバクラ誕生から10年後には全国で1万店舗以上の広がりを見せ、今ではネオン街ビジネスの主流です。水商売が後ろめたい職業ではなくなり、キャバクラがネオン街の敷居を低くしたのです」

 キャバクラの語源は『キャバレーの気軽さで高級クラブの満足感』だ。たしかにキャバクラの登場で、低価格で気軽に満足感を味わえるようになったことも事実だ。キャバクラは水商売に無縁でノウハウを持たなかった異業種参入組をも取り込み、さらなる発展と派生を遂げた。高級キャバクラ、ニュークラブと銘打ち、旧来の会員制高級クラブ以上の豪華さとステータスを売りにする店舗も現れた。

「数多くのキャバクラを網羅した無料案内所や、キャバクラ専門誌、キャバクラ求人誌。キャバクラはネオン街の新たな主役となり、その結果、今ではキャバレーは化石時代、高級クラブは旧時代という扱いや認識を受けるようになり、ネオン街では衰退するばかりです」

 キャバクラならではの、新たな接客術や職業意識も芽生え始めた。

「高級クラブにはない接客テクニックをキャバクラ嬢たちは生み出しました。敬語を一切使わない友達営業、客に命令までするオラオラ営業、妹のように甘える妹営業…、ツンデレも元はキャバクラ嬢の編み出した男心をくすぐるテクニックです。今までのキャバレーや高級クラブでは絶対に考えられない接客術ですよ。ホステスとキャバ嬢は、ある意味まったく別の職業なのです」

 
◆ホストクラブVSホスクラ、ホスト業界の大変貌

 男性が主役のホスト業界も数年前の一大ホストブームの際に、高級クラブとキャバクラと同じような逆転現象と大変貌を遂げた。そう話すのは、長らくホストクラブに勤めていたが、新人類ホストの登場でホストは引退し経営側に身を転じた男性だ。

「それまでのホスト業界はゴージャス感を売りにしたセレブ女性のための秘められた世界。ダンス、歌、会話、立ち居振る舞い、ファッション、我々は女性たちを満足させる術を真剣に学びました。ところが、先のホストブーム以来、居酒屋の合コンノリで営業する新人類ホストと、新たな業態であるホスクラ(従来のホストクラブと一線を画すようにキャバクラを意識して名づけられた)が今ではホスト業界の主流です。職業意識は、ホステスとキャバ嬢以上に、今までのホストとはまったく異なります。でも、彼らこそがホスト業界を盛り上げ敷居を低くしたことは事実です」

 ネオン街では時代の移り変わりや求めに応じて、さまざまな業種が繁栄と衰退を繰り返している。時流を捉えた新たな業態が生まれると、古い業態は消え、再び時流を捉えて新たな業態として甦る。常に進化し続ける夜の世界で、キャバクラやホスクラに変わる新たな業態が生まれる日もそう遠くないはないだろう。
(文=神峻)

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