【女と男の隔たり】感情の読めない無表情な女

 笑顔を見せたゆうかはパンティを履かないまま、ドライフルーツをボリボリ食べていた。その姿をみて、ゆうかのむっちりとした体型の理由がなんとなくわかった。

 僕もゆうかにドライフルーツをもらい、お互いそのまま無言で食べた。セックスの後の甘いものは美味しい。セックス後の虚無感の上に、甘い幸福感が重ねられていく。

 ドライフルーツはあっという間になくなった。


「そしたら、帰るね」

「うん」


 セックスも終わったし、ドライフルーツも食べ終わった。もうこれ以上ゆうかと一緒にいて、楽しい空間を作れる自信がなかった。

 玄関で靴を履く。そして後ろを振り向くと、ゆうかは靴を履かず、ただそこに突っ立っていた。

 そういえば、ゆうかがパンティを履いたのを見ていない。


「そしたら帰るね」


 ゆうかの後ろをついてこの家にたどり着いた。20分以上かかる道を、僕はひとりで帰れるのだろうか。

 そういえば、ゆうかの後ろ姿をみて「バックしたい」と思ったんだと、唐突に思い出す。後悔の念が少し、胸の中に広がる。

 ドライフルーツを食べ終わったあとから、ゆうかの表情はまた相変わらずの無表情に戻っている。

 しかしその表情にも慣れた。ゆうかは感情表現が苦手なのだ。自分の気持ちや言葉を発するのも、おそらく苦手なのだろう。そう思えば、なんだか可愛らしくも思えてくる。


「大丈夫だよ。ひとりで帰れるから」

「…」

「家に入れてくれてありがとう。ドライフルーツ美味しかったよ」

「…雨」

「ん?」

「…雨が嫌いなの」


 部屋の中に打ち付ける音が響くほど、外はまだ雨が降っている。


「そうなんだ。大丈夫だよ。むしろ、雨の中迎えに来てくれてありがとうね」


 セックスが嫌いじゃなくてよかった。


「じゃあ、また」


 そうして僕は扉を開けて、ゆうかの部屋を出た。

 もう僕はゆうかに会うのだろうか。もうその時が来たら、今度はちゃんとバックをしたい。

 外は激しく雨が降っている。


「今度は…晴れた日に会おうね」


 僕のその言葉と共に扉が閉まる。

 気のせいかもしれないが、僕のその言葉を聞いたゆうかの表情は、今日1日の中で1番輝いているように見えた。

(文=隔たり)

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