【女と男の隔たり】元カレが忘れられない女:前編

「…話を聞いてくれて、嬉しかった」


 マリはポツポツと言葉を紡ぎ始めた。


「泣いちゃったのに、話を聞いてくれて嬉しかった」


 手を握っていない方のマリの手が僕の太ももの上に置かれる。


「嬉しかったから…」


 下を向いていたマリがほんの少しだけこちらを向いた。恥ずかしがっているようなその仕草が、なんだか可愛らしくて愛おしく思えた。


「今日だけなら、いいよ」


 そう言ったマリの表情は、照れている可愛らしい女の子のそのものだった。僕の苦手な主張の強い顔のはずなのに、嫌悪感は全く感じなかった。

 人の気持ちは顔に出てしまうものなのかもしれない。初めは警戒していたから、強い顔になっていたのだろう。今のこの可愛らしい顔は、僕のことを受け入れてくれたというあらわれだ。


「ありがとう」


 そう言って僕はキスをした。マリの手が僕の背中に回される。そして、強く抱きしめてくる。僕も手を回して、マリのことを抱きしめた。


「そしたら、ベッド行こうか」

「うん…」


 マリが頷いたと同時に、部屋の電話がなった。


「ちょっと出るね」


 マリにそう告げて電話をとる。受話器から受付にいた女性の声が聞こえた。

 その声の内容を理解した僕は、マリの方を向いて、こう言った。


「1時間延長でお願いします」


(続きは9/27に掲載予定)

 

(文=隔たり)

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