「ンハァ…チュ…ンハァ…」
マリの口から声が漏れた。感じている。ディープキスに集中している声だ。僕は舌を思いっきり伸ばし、マリの口内へと侵入させた。
互いの舌が激しく動き、レロレロと絡まり合う。マリの口の中の空洞はディープキスでいっぱいになった。次は下半身の空洞を、僕のモノで埋めたいと、キスが激しくなるたびに欲望が膨らんでいく。
やっぱりここまできたからにはセックスをしたい。元カレの代わりでもなんだっていい。いま、ラブホテルでふたりきりでいるのだから。
キスを続けながら、マリの胸へと手を伸ばす。すると、触れるか触れないか程度のところで、マリの手が僕の手を弾いた。
「それはダメ」
「え、なんで」
キスが受け入れられたので、胸を触ることも受け入れてくれると思った。激しくディープキスもしていたので、マリの気持ちも盛り上がっていると思っていたので、これは予想外だった。
「ダメだよ。だって、私は元カレのことが今でも大好きだし…」
マリが今更な理由を口にする。もう、キスをしてしまったじゃないか。その理由ではもう、僕の性欲を止めることはできない。
「でも、キスはしてくれたね」
「…うん」
「ごめん、嫌だった?」
「…嫌じゃなかったけど…」
マリは胸を触られないような理由を必死に考えているようだった。しかし、もうキスをしてしまっては遅い。
「受け入れてくれて嬉しかったよ」
僕は再びマリにキスをした。マリはやはりキスを拒まない。
「いまさ、俺らはどこにいる?」
「…ホテル?」
「なにホテル?」
「…ラブ、ホテル」
「なにするところかな」
「…」
マリはなにも言わず、ただただコクリと頷いた。
「マリが元カレのことを大好きだってことは、話を聞いたからよくわかった」
僕はマリの手の上に、自然と自分の手を添える。
「でも、マリはいま僕とラブホテルにいる。そしてキスをした。僕は嬉しかった。マリが受け入れてくれたと思って嬉しかったんだ。だから…」
僕はここで一度、大きく息を吸った。
「僕はマリとセックスがしたい。今日だけでもいい。今日だけでもいいから、元カレの代わりとしてでもいいから」
マリの手を強く握る。
「セックスしよう、マリ」
古びた部屋の中に、僕の発した「セックス」という言葉が大きく響く。そしてその音が消えた後、反動で部屋は一瞬静寂に包まれた。
セックスができたらいいなという淡い期待を持ってマリに会った。マリの顔を見て、ちゃっちゃとラブホテルに行こうと思った。マリの元カレの話を聞いて、ラブホに誘ったことを後悔した。
でも今は、マリと出会ってここまで感じてきた感情が全て吹っ飛んでいる。感情が変わるのは本当に一瞬だ。僕は今、マリとセックスがしたくて仕方がなくなっている。ここでセックスできなければ後悔するだろうと思うくらい、マリをいい女だと感じている。それはマリとキスをして、心が奪われてしまったのかもしれなかった。
マリは悩んでいるのか、言葉を発さない。不安になった僕は、思わず言葉を重ねる。
「マリ、ダメかな?」
僕はマリの手を強く握った。