ハナちゃんが浴室に入ったのを確認してから、室内に備え付けられている小さな洗面台に向かう。手洗いとうがいをするためだ。
ここで、フと誘惑に負けて右手中指の匂いを確認してしまった。
ズーんっ!
強烈な腐敗臭が鼻孔を襲ってきた。指先だけゾンビになってしまったような感覚だ。
長時間手マンしていたせいで、彼女のマン臭が完全にこびりついてしまったのだろう。
大急ぎで手洗い開始。大量のハンドソープを使い、いつもの数倍時間をかけて手を洗う。
その後、帰り支度を終え、ホテルを出る。
「じゃ、俺は西武線で帰るから」
すぐにハナちゃんに告げて背を向ける。
少しばかり遠回りになるが、西武新宿駅の北口を目指しひとりで歩き始める。
電車に乗り、吊り輪に掴まる。車内は空いていたが、一駅で降りるのでいつも座席には座らない。
ここでまた右手中指の匂いを確認。
まだわずかに腐敗臭が漂っていた。
自宅に戻り、再び長時間かけて手を洗う。なんとか匂いは消えたものの、手が荒れてしまいそうで心配な筆者だった。
(文=所沢ショーイチ)