【女と男の隔たり】挿入手前までの関係:前編

 待ち合わせ場所に現れた真央は、真っ赤なロングワンピースを着ていた。合コンの時の大人しい印象や、ラインの文面から想像していた真央とかけ離れていたので、僕は思わず驚いてしまった。なんてセクシーなんだと。

 しかしよく見ると、すらっとしたスタイルの真央にロングワンピースはとっても似合っていた。パッと見たときは赤色なんて派手だなと思ったが、意外と大人しめな真央の表情との良い対比になっている。真央の顔は主張が弱いので、もし地味な服を着ていたとしたら全体的に地味になっていたかもしれない。真っ赤なワンピースを着ていても嫌な印象は全くしなかった。


「赤い洋服似合ってるね」

「本当? ありがとう」


 洋服を褒めると、真央は細い目をさらにくしゃっと細くさせて笑った。赤い服って本当にセクシーだと思う。刺激的な色のせいか、真央を見るたびなんだかムラムラしてしまった。

 真央と見た映画は、いま流行りの恋愛映画だった。互いにミステリーが好きという話題で盛り上がったので、始めはミステリーを見るのかと思ったが、真央が「これを見たい」というので恋愛映画を見ることになった。

 映画の内容はよくある恋愛ものだったが、ときおり挟まれる抱きしめ合うシーンやキスシーンに、僕はドキドキしてしまった。彼女と別れてからキスはご無沙汰だったので、映画とはいえ、キスシーンを見るだけで興奮してしまう。真央はこのキスシーンを見てどう思ったのだろうと、そういったピンク色の妄想で頭がいっぱいになり、映画の内容はあまり入ってこなかった。

 映画を観終わったあと、ご飯屋さんに入って感想を話し合った。


「意外と面白かったね」

「そうだね」

「どのシーンが印象に残ってる?」


 僕は素直に「キスシーン」と答えた。その回答を聞いた真央は、「確かによかったね」と照れた表情を見せた。

 ご飯を食べ終わり、なんだか帰るのも惜しかったので、僕は「公園でも散歩しない?」と提案した。時間は21時を回っていたが、真央は時計を見ることなく「いいよ」と答えた。公園に誘ったのは、映画のキスシーンの舞台が公園だったからだ。

 僕と真央はご飯屋さんを出て、近くの公園へと向かう。その公園は駅から少し離れたところにあった。駅前の喧騒から離れると、住宅街に差し掛かった。静かな街の中で真央とふたりで歩いている。まるでふたりきりで個室にでも入ったような静けさに、期待がどんどんと膨らんでいく。


「なんだか静かだね」


 そう呟いて真央の方を見る。静かな住宅街の中で、真央の赤いロングワンピース姿は異質だった。静けさとのギャップで、思わず股間がうずいてしまう。


「そうだね」


 真央は僕の方を見て軽く微笑んだ。後ろから街灯の光に照らされていて、真央の顔がよく確認できない。しかし、その表情は初めて出会ったときよりも、さっき明るい店内の中で見たときよりも、なんだか妖艶に見えた。大人の色気を感じる。少し厚い唇は潤っているようにも見えた。

 住宅街を5分ほど歩くと、目的の公園にたどり着いた。その公園は小さな公園ではなく、スポーツができる広場があったり、かくれんぼができるほど遊具がたくさんある大きな公園だった。大きな木が何本も生え揃っていて、空は木々に覆われていた。外から見ると公園ではなくて、まるで森みたいだ。


「なんかすごいね」

「ね、大きい公園」

「そしたら、中を散歩してみようか」

「うん、わかった」


 公園に入るとすぐに小さな幅の階段があり、そこを登ると広場に出た。広場にはブランコや公衆トイレがあった。その広場の横に公園の奥まで進める緩やかな坂道があったので、僕らはその道を歩くことにした。夜遅いせいか、公園には全く人の気配がなかった。


「静かだね」

「うん、そうだね」

「なんだか不気味かも」


 真央は体の前で両手を組み、怯えるような仕草を見せて笑った。こうやっておちゃらける一面もあるのだと、僕は微笑ましくなった。


「真央、それ怖がってるの?」

「うん、怖がってる」


 真央は再び体を震わせる真似をする。目が合って、なんだかおかしくなって、ふたりで声をあげて笑った。静かな公園に、僕らの笑い声はよく響いた。

 見上げると、木の葉の間から月が見える。その光が葉の間をぬってバラバラに降り注ぎ、道を照らしていた。その道を僕と真央は笑いながら、ときに黙りながら歩いていく。公園の奥に進むたびに光は薄くなり、先ほどまで冗談で言っていた不気味さが、本格的に漂い始めていた。


「なんか、本格的に暗くなってきたね」

「確かに、ちょっと怖いかも」


 真央はさっきみたいに、寒さに耐えるかのように腕を前に組んで体を縮ませている。


「そしたら、戻ろうか」

「そうだね」


 僕らは公園の奥まで行くのをやめて、来た道を再び戻ることに決めた。真央が戻ろうと振り返ったとき、ロングスカートがひらりと舞い、僕の手に触れた。


「あっ」


 急に真央という存在に触れた感覚に、思わず声が漏れる。


「ん、どうしたの?」

「いや、スカートが当たったなって」

「あ、ごめん」

「いや、全然大丈夫なんだけど…」


 手の甲に真央のスカートの生地の感触が残っている。さっき見た恋愛映画、公園でのキスシーン、真っ暗な公園、真央とふたりきり。もっと真央に触れてみたいという欲望が、どんどん膨らんでいく。

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