「こんばんは。ナツキちゃんかな?」
「あ、はい。ショーイチさんですか?」
「うん。そうだよ。今日はよろしくね」
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします」
「じゃ、早速だけど向かおうか?」
「え?」
「ほら、ここじゃ人目があるでしょ? 歩きながら話そうか?」
「は、はい」
我ながらなんて冷たい態度なのだろう。
筆者は聖人君子ではない。エネルギーを注いでも構わない相手とそうではない相手の時の落差が激しいだけだ。
だが、ちょっと不安そうな表情を浮かべたナツキちゃんの顔を見て、胸の奥がチクリと傷んでしまった。
これも愛撫の一部なんだから頑張るか。そう思いなおし、省エネモードで場を温めることにした。
「ね、俺で大丈夫かな?」
「え?」
「写メを送ってたけど、実物の俺を見て話が違うとか思ってない?」
「そ、そんなぁ」
「遠慮とか無理はしないでいいんだよ。嫌だと思ったら、ここで断ってもらっていんだよ。絶対に怒ったりしないから安心してね」
「い、嫌なんて思ってないです。むしろ優しそうで安心しました」
彼女と出会ってから、優しい素振りをしたつもりはなかった。それなのに、こちらを優しそうだと判断したようだ。
この調子なら最後まで省エネモードで対応できそうだと一安心。
「うん。この顔を見れば分かるだろうけど、俺ってMなんだ」
「え? Mですか?」
「あ、安心してね。痛いのとか汚いのが好きってわけじゃなくて、女性に尽くしたいっていう奉仕系のMなんだよ」
「フフフ、はい」
「だから、ナツキちゃんの嫌がるような真似は死んでもしないよ。それだけは神に誓うからね」
「は、はい。分かりました」
「じゃ、このままホテルに向かうってことでいいかな?」
「はい。大丈夫です」
北口階段から地上に出て、徒歩数分でお目当ての激安ラブホテルに到着。
部屋に入ると同時に窓際に向かい、ナツキちゃんに告げることにした。