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初めまして、ヨーコさん。
都内の会社員、ショーイチ・39歳です。私も既婚者です。
さきほど、ヨーコさんの書き込みを見つけました。
優しいくらいしか取り柄のない私ですが、ヨーコさんと楽しくて気持ちいい時間を過ごしたいです。
今日は仕事が休みなので、5分後でも数時間後の待ち合わせでもOKです。
あ!
お返事もらえたら、私の写メを送りますね。
それを見てもらってからで構わないので、検討のほどお願いします!
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こんなファーストメールを送信したところ、ものの数分で彼女からの返信が届いた。
そこから数回のメール交換を経て、あっさりと約束が成立したのだった。
待ち合わせ場所は新宿アルタ前。現在の正式名称は別の名前となっているが、まだまだ「アルタ前」で集合という言葉は通用する。
果たして後何年くらい通用するのだろうか? 少し寂しいような気もするが、平成後期から令和にかけて生まれた女性には通用しないだろうな。
自宅からバスで新宿に向かい、約束の数分前に到着。
すると、そこにはヨーコちゃんらしき女性が既に立っていた。
うわっ! コイツ、でかいなぁ!!
彼女の身長は175センチ以上あるように見えた。ヒールの低い靴を履いていたものの、パっと見は180センチくらいに見えてしまったのだ。
こういう女性には過去に何度も遭遇してきた。
まず、冷静になって彼女の腰の位置をサーチする。
もし、腰の位置が高く、股下が長い女性だった場合は簡単だ。背が高いとは言わず、「モデルみたいだね」と言えばまず問題ない。
だが、腰の位置が人並み、もしくはそれ以下だった場合、褒め言葉がなくなってしまう。
ヨーコちゃんの場合は、後者だった。ウエストの位置が普通で、モデルという形容詞を贈るには無理があり過ぎたのだ。
こうしたケースでは、身長の話題に触れないというのが一番の対処法だ。
背の高さにこれっぽっちも気づいていない素振りをしながら、ゆっくりと近づいていき声をかける。
「こんにちは、ヨーコちゃんかな?」
「あ、はい。ショーイチさんですか?」
「うん。今日はよろしくね」
「はい。こちらこそお願いします」
「どう? ビックリしてない?」
「え?」
「送った写メの何百倍もエロそうな顔してるでしょ、俺って? ヒいたりしてないかな?」
「そんなことないですよぉ。ショーイチさんこそ私みたいなデカイ女でガッカリしてませんか?」
自ら背の高さをフってきたヨーコちゃん。きっと今まで何度も背の高さを指摘されているのだろう。
自分のプライドを守るため、人に言われるより先に自分から切り出す癖がついているのかもしれない。