「で、でも、顔がちょっと怖そうです」
「あぁ、本当にごめんね。仕事の段取りを考えていたから、難しい顔してたのかも」
「そ、そうですか…」
「ほら、今の俺の顔をよく見て」
オデコや目の周りの筋肉を弛緩させ、表情を和らげる。
他人の顔色を窺って己の表情を偽装するスキルにはちょいとばかり自信があるのだ。
「ね? 別に怒ったり不機嫌なわけじゃないよ」
「ほ、本当ですか?」
「うん。送った写メと今の顔、同じでしょ?」
「そ、そうですね」
「メロちゃんこそ、俺みたいなので大丈夫?」
「も、もちろんです!」
大きい声で「も、もちろんです!」と即答してくれたメロちゃん。ほんの数ミリほど彼女が可愛く見えてしまった。
それにしても、彼女の卑屈さが気になってしまった。
きっとこれまでに幾度となく顔パスされ続けてきたのだろう。そうした過去の苦い思い出が積み重なり、ますます自信を無くしてしまう。負のスパイラルというやつだ。
メロちゃんを褒めちぎって、ほんの少しの自信をもたせることは簡単だ。
だが、いくら自信を持たせようとも現実は無慈悲である。下手に持ち上げてしまったら、その落差によって余計に彼女が傷つくだろう。
そんなワケで、言葉少なめにホテル街へ向かうのだった。
到着したのは激安のラブホテル。ワンルームマンションを改築したような造りのところで、まさにヤリ部屋といった感じだ。
筆者は部屋に入ると灰皿を片手にして窓際に移動する。
「じゃ、俺は一服してるから先にシャワー浴びておいで」
そう告げてから煙草に火を点ける。
はぁぁぁぁぁぁぁっ…
煙草の煙を吐き出しながら大きなため息をつく。
表情筋のコントロールを緩めると、ギチギチっと音を立てて眉間に皺が刻まれていく。
なんと! 当サイト人気NO.1連載『ネットナンパ』でお馴染みトコショーさんが、ネットナンパで培った知識や経験を、みなさまの前でお話ししていただけることが決まりました! 題して、「トコショー流、ネットナンパ術(仮)」 の開催決定です!