「レイちゃんにとっては半年ぶりのエッチになるのかな?」
「は、はい。そうですね。前の彼と別れてから一度もしてないので…」
「あ、ごめん。嫌なこと思い出させちゃったかな?」
「全然平気ですよ。もう完全に過去のことですから」
「そ、それなら良かった。ね、レイちゃんはどんなエッチが好きなのかな?」
「え?」
「さっきも言ったけど俺ってMだから、女性の喜ぶことだけをしたいんだ」
「そ、そんなの突然言われても…」
「あ! 今無理に言わなくてもいいよ。思いついたらで構わないから、遠慮しないで命令して」
「め、命令ですか?」
「うん! 女性にアレしてコレしてってお願いされると、俺は犬みたいに尻尾を振って喜ぶからさ」
「フフフ、ショーイチさんって変わってますね」
「や、やっぱりヒいちゃったかな?」
「いいえ。凄く安心できました」
「それなら良かったよ」
ラブホ街に到着し、中級クラスのホテルにチェックイン。部屋に入り、途中の自販機で購入したお茶で喉を潤す。
「こういうホテルに入るのも久しぶりなのかな?」
「そうですね。10年ぶりかもしれないです」
「え? ってことは前の彼とはどこでしてたの?」
「いつも彼の家でした」
「そ、そうなんだぁ。今日はホテルだから、遠慮なく大きな声を出してもいいんだよ」
「や、やだ。それは恥ずかしいです」
「なに言ってるの? もっと恥ずかしいことするんだから、声くらいはなんでもないことだよ」
「そ、そうかもしれなけど…」
「あ、ごめん。無理はしなくていいからね。ただ、余計な気をつかわずにエッチを楽しんでほしいだけなんだ」
「フフフ、本当に優しいんですね。ショーイチさんって」
「それはちょっと違うかな。超がつくほどのスケベなだけだよ」
「え?」
「だって女性が遠慮してたり緊張してたりしたら、俺が楽しめないんだ。だから、レイちゃんにはとことんリラックスしてほしいんだ」
「そういうのを優しいって言うんじゃないですか?」
「違うって。全部俺のためなんだって。だから、優しいんじゃなくてヤラシイだけなんだよ」
「は、はい。分かりました♪」
ようやくリラックスした様子で笑顔を見せてくれたレイちゃん。この笑顔を見ることができたら、勝ち戦みたいなものだ。
とことん自分を卑下して、こちらの思い通りに事を進める…。我ながらなんて姑息なのだろう。
こんな性格だから50年間一度も彼女ができたことがないのかもしれない。
だが、今更この性根を入れ替えることなんてできやしない。それに後悔するつもりもさらさらない。たとえ生まれ変わっても、現在の所沢ショーイチと寸分違わぬ人生を送りたいと思っているのだ。