「ね、いきなりだけど、俺の顔をよく見て」
「え?」
「ほら、ドMですって顔に書いてあるでしょ?」
「ええっ?」
「あ! 誤解しないでね。SMとかにはあまり興味がないからさ」
「は、はい」
「ただ性格がドMだから、女性の嫌がることは死んでもできない体質なんだ」
「は、はぁ」
「だから安心してね。レイちゃんが嫌だと思ったら、ここでごめんなさいしても怒らないよ」
「ふ、フフ。そんなことしませんよぉ」
「え? ホントに? 無理してない?」
「ショーイチさんこそ、私みたいなので大丈夫ですか?」
「なに言ってるの! 大丈夫に決まってる。いいや、土下座してでもお願いしたいくらいだよ」
「フフ、ちょっと声が大きいですよ」
「ご、ごめん。ちょっと興奮し過ぎちゃったね。と、とりあえず歩きながら話そうか?」
「はい」
こちらの道化じみたテンションで、虚を突かれた感じのレイちゃん。だが、こちらが下手に出たおかげで、彼女がマウントを取れたと錯覚してくれるわけだ。
その結果、優位性を感じて緊張がほぐれるという流れなのである。女性に虐げられることに何の抵抗も感じない筆者ならではの常套手段だ。