「まず、安心してね」
「えっ?」
「ここで顔パスされても、絶対に怒ったりしないからさ」
「どういうことですか?」
「ほら、俺の顔を見て。すっごくスケベそうでしょ? 送った写メもスケベな顔してるけど、実物はさらにキテるでしょ?」
「そ、そんなことないですよ。とっても優しそうですよ」
「う、うん。優しいのは間違いないと思う。でも、ヨウカちゃんがドン引きするくらいスケベなんだよ」
「フフフ。正直なんですね」
「うん。女性に嫌な思いをさせたくないから、最初に正直に伝えておきたいんだ」
「ど、どのくらいエッチなんですか?」
「あっ、誤解しないでね。痛いのとか汚いのは嫌いだよ。ただただ女性に奉仕したいだけなんだ」
「えっ? ほ、奉仕ですか?」
「と、とりあえずここで立ち話もなんだから、歩きながら話そうか?」
「は、はい」
こうして、ホテル街に向かって歩き始めることになった。
そして、ギリギリ彼女に聞こえるくらいのボリュームで会話を続ける。
「俺って、精神的なMなんだ。だから、ヨウカちゃんみたいに綺麗なコを見ると、”尽くしたい“って思っちゃうんだ」
「えっ、う、嬉しいです」
「本当に? たくさん舐めまくっても引いたりしない?」
「むしろ大歓迎です…」
「あ、ありがとう。それじゃあ、このままホテルに向かうってことでいいかな?」
「はい! もちろんです」
はきゅぅぅぅん♪
笑顔でホテルに直行することをOKしてくれたヨウカちゃんを見て、胸がキュンキュンしてしまった。
過去の俺、ありがとう!!
思えば、筆者の人生は負けの連続だった。容姿に恵まれず、チンポも小さく、おまけに早漏ときている。50歳にして貯金もゼロで、友達と呼べる存在もいない。
過去に星の数ほど女性に惚れてきたが、その恋が報われたこともない。そう、まともな恋愛を経験したことがただの一度もないのだ。
こんな人生だから、ふとした瞬間に暗黒面に捕らわれそうになることがある。いつもなんとかギリギリのところで踏みとどまっているが、常にタイトロープ状態だといえる。
しかし、ヨウカちゃんのような女性に出会うと、過去に起こったすべての事象に感謝の念が湧いてきてしまう。
こういう人生を歩んできたからこそ、こんな素敵な女性に出会えたのだ‼
今まで俺に降りかかってきた艱難辛苦よ、ありがとう‼
人生を放棄せず、生き続けてくれた俺よ、ありがとう!!
いつもはくすんで見える歌舞伎町の街並みがピンク色に輝き、歩きタバコしているバカを見かけても殺意は湧いてこなかった。