このファーストメールのテンプレートは、もう10年近く使い回している。出会える系サイトで遊び始めたころから何度も試行錯誤を繰り返し、ようやく辿り着いたものだ。
長くも短くもない普通の文章だが、ここには筆者が長年の経験で重要だと感じたエキスが凝縮されている。
まず基本の挨拶から始まり、文章の中で相手の名前を複数回登場させる。そして、時間の融通が利く都合のいい相手だと思わせ、優しさもしっかりアピール。さらに、積極的に自分の写メを送ると約束し、相手に興味をもたせる。
たったこれだけのポイントを押さえているだけで、女性からの返信率が急上昇する。とてもシンプルなことなのだが、世の男性の多くがこの基本をおろそかにしていたりする。
ということで、ふみかチャンに6人アプローチしていようが、返事がくる可能性は高いと思っていた。
5分後、こちらの思惑通り彼女からの返信が届いた。
昔は女性から返信が届く度に一喜一憂していたが、今では当たり前すぎて何の感動もない。もちろん、あの頃のドキドキ感をまた楽しみたいと思ったりもするが…。
すぐに写メを添付し返信。数回ほどのやり取りで、あっさりと約束は成立した。
待ち合わせ場所は、池袋駅北口から歩いて2分ほどの携帯ショップの前。ここは出会える系サイト遊びの待ち合わせスポットとしてよく利用される場所だ。
駅から近く分かりやすい上に周囲が開けているのが特徴で、遠くから相手の容姿をある程度確認できると考えれば、女性側からしても安心だろう。
約束の5分前に到着し、ドキドキしながらふみかチャンを待つ。
このドキドキ感は、何百回繰り返しても新鮮だ。アドレナリンやらドーパミンやら先走り液やらがダダ漏れになり、日ごろの疲れが吹き飛んでしまうほどハイになれる。
約束の時間になると、ふみかチャンらしき女性がこちらに近づいてきた。
なぬっ? こ、これはヤバいかも?
彼女のプロフィールの詳細ページには24歳とあったが、今こちらに近づいてきているふみかチャンは、あまりにもロリロリし過ぎていた。
まるで現役の女子校生!?
確かに“顔も体型もちょいロリ系“と書かれていたものの、まさかここまでだったとは!
嬉しさと犯罪を犯してしまうのではないかという恐怖感がゴチャ混ぜとなり、胸の鼓動が速まる。
そんな心配をよそに、ふみかチャンはわずかな笑みを浮かべながら会釈してきた。
「あ…、ふ、ふみかチャン?」
「はい。ショーイチさんですよね?」
「う、うん」
「フフフ。今日はよろしくお願いしますね」
「え、えっと、あのぉ…」
「はい?」
「念のために聞くけど、女子校生だったりしないよね?」
「違いますよぉ。ちゃあんと成人してます!」
「ゴメンね。あまりにも可愛いから、疑っちゃったよ」
「あ、ありがとうございます」