我ながら実によく動く舌だ。普段は無口で、女性と会話するのは苦手なのだが、出会える系サイト遊びの最中は別人のようになる。頭の中で、
これは会話ではなく、愛撫の一部だ!
そう切り替えると、考えるより先に言葉が次から次へと出てくるのだ。
「フフフ。褒めるのが上手ですね」
「褒めてなんかいないよ。会社の男性からちょっかい出されたりしてないの?」
「そ、それは…、ないですね」
アカリちゃんが口ごもったように見えた。もしかしたら、“会社”という言葉が地雷なのかもしれない。
こういう遊びだからこそ、日常を思い出したくないと思う女性は多い。ここはすぐにでも方向転換すべきだろう。
さりげなく他の話題に移ろうとしたが、アカリちゃんの愚痴話が始まってしまった。
「私、会社ではすっごくババァなんですよ」
「えっ?」
「私以外は20代のコばかりで、なんだか浮いてるんですよね」
「そ、そうなんだ」
「若いコたちとは話も合わないし、周りの男性社員もあっちばかり可愛がるし…」
“やさぐれ”モードに突入してしまったようだ。
こうなったら、強引に褒め倒してご機嫌を取るしかない。
「それは周りの男が馬鹿なだけだよ」
「えっ?」
「俺だったら、絶対にアカリちゃんをチヤホヤしてたと思うよ」
「ど、どうしてですか?」
「だって、小便臭い小娘なんてエロくもなんともないでしょ? 女性は30歳を過ぎてから色っぽくなるものだと思うよ」
「わ、私、色気なんてないですよぉ」
「いやいや、あるって! 実はね、さっきから俺、ずっと勃起してるんだ」
「えっ?」
「早くアカリちゃんとイチャイチャしたいから、本当はダッシュでホテルに向かいたいんだよ」
「フフフ。本当にエロかったんですね」
「最初にエロいって伝えたでしょ。俺みたいにエロい男は、いい女の前だとカラダがすぐに反応しちゃうんだよ」
「そ、そんなぁ」
「だから自信を持って大丈夫! アカリちゃんはモテるって!」
「フフフ。ありがとうございます」
無理やり褒めているうちにエンジンがかかり、心の底から彼女がエロく見えてきた。
そうこうするうちに目的のホテルに到着した。