「そんなことないって! メイコちゃんのほうこそ、俺の見た目にガッカリしていない?」
「そ、そんな。ショーイチさんは写メのまんまですよ」
「それなら、引いてないってことかな?」
「はい。もちろんです!」
不細工同士が相手の容姿を貶さないようにしている、という構図だ。端から見たら滑稽な寸劇にしか見えないだろう。
自意識過剰なのは百も承知だが、周囲の視線が集まり、見世物になっているように思えて仕方なかった。
「こ、ここで立ち話もアレだから、歩きながら話そうか?」
重圧に耐えきれなくなり、北口に向かって彼女を先導することにした。
「メイコちゃんは、こういうサイトを使うのは初めてなんだよね?」
「はい。昨日登録したばかりで、緊張してます」
「そりゃそうだろうね。どんな男が来るのか分からないんだから」
「そうですね。でも、ショーイチさんは自分から画像を送ってくれたので安心できました」
「そ、そうなんだ。だけど、見た目で判断するのは危険じゃない?」
「そういえばそうですね」
「うん。俺ももしかしたら性格が最悪かもしれないよ」
歩きながら少しだけ冷静さを取り戻した。こちらから断ることはできないが、なんとかメイコちゃんのほうから断ってくれることに一縷の望みを託すことにした。
「だって、ショーイチさんも結婚しているんですよね。だから、安心かなって思って」
そうだった! 筆者は人妻にアタックする際、既婚者だと偽ることがよくある。今回もメイコちゃんにはそういう形でアプローチしていたのだ。
なにしろ、人妻にとってもっとも怖いのは“後腐れ”があることだ。その心配を払拭するには、同じ既婚者だとアピールするのが一番手っ取り早い。
「う、うん。結婚指輪はしてないけど、俺も既婚者だよ」
「ですよね。だから、あまり怖いとは思いませんでした」
「そ、そうなんだぁ…。でも、俺ってとんでもなくスケベだよ」
「フフフ。私もエッチなほうですから問題ないですよ」
ちっ!
容姿の悪さやスケベさを強調しても、メイコちゃんはまったく動じなかった。
彼女を翻意させる方法は何かないのか…。