おーい、皆の衆聞いてくれぃ! 俺は今からこの女子大生とセックスするんだぜぇぇぇぇ!!
そう叫びだしたい衝動に駆られてしまった。
非モテと童貞をこじらせまくっていた若かりし頃の筆者は、社会全体を真っ向から否定していた。しかし、何もできないので妄想の世界に入り浸り、ドラえもんの“もしもボックス”で自分以外の男を消し去ってハーレムを作り上げることばかり考えていたものだ。
だが、今は違う。この世のすべてのことに感謝し、生きる喜びに打ち震えるばかりだ。
キュッと奥歯を噛み、顔の筋肉を引き締めてからゆっくりとM美チャンに近づいていく。
くーっ、写真よりもずっと可愛い!
近づくにつれ、彼女の容姿がより鮮明になる。スタイルは細めで、おっぱいは期待できそうになかった。だが、これだけ可愛いならおっぱいの大小なんて誤差みたいなものだろう。
彼女の前に立ち、軽く会釈しながら声をかけた。
「お待たせ、M美チャン。ショーイチだよ」
「あ、はい。M美です。き、今日はありがとうございます」
「ん? それは違うと思うな。ありがとうは、俺のセリフだよ」
「えっ?」
「ほら、俺の顔を見てごらん?」
「は、はい」
「すっごく嬉しそうな顔をしていると思わない?」
「そ、そうなんですか」
「うん。少なくても今世紀に入ってから一番嬉しそうな顔をしているんだよ」
「こ、今世紀ですか?」
「うん! 写真をもらってたからM美チャンが可愛いのは分かってたけど、実物はその何百倍も綺麗で可愛いよ」
「そ、そんなぁ。大げさですよぉ」
「あれ? M美チャンは俺のコラムを読んでるんだよね。だったら知ってるはずでしょ。俺は好きなコの前では絶対に嘘をつかないって」
「そ、そうですね」
「だから、ありがとうは俺のセリフなんだよ。こんな俺に会いたいって言ってくれて本当にありがとう」
「フフフ。コラムを読んで想像していた通りですね」
「ん? なにが?」
「ショーイチさんって、女性と距離を縮めるのが上手だなぁって思ってたんです。初対面の男性とお話するのは苦手なんですけど、ショーイチさん相手だとすっごくナチュラルに話せます」
「そ、そういうものかなぁ」
「はい。絶対にそうですよ。この人は絶対に女性を悲しませないっていう安心感がありますよ」
「うん。その点は100億パーセント信じてもらって大丈夫! 女性に嫌な思いをさせるくらいなら、その場で頸動脈を切って死んだほうがマシだからね」
「フフフ。なんだか不思議な感じです」
「どういうこと?」
「今まで2次元の存在だと思ってたショーイチさんが、そのまんま目の前に現れたって感じです」
「お、おう。コラムでしか俺のことを知らなかったんだから、そういうものかもしれないね」
「はい。だから私も嬉しいんです。想像していた通りの人だから」
「いやぁ、ますます気合が入っちゃうなぁ。と、とりあえず歩きながら話そうか」
こうしてラブホ街に向かうことになった。