「やっぱり人が多いところだと、緊張しちゃうよね?」
「えっ? あっ、はい」
「そこの階段を降りて地下に向かおうか? 人通りも少ないと思うからさ」
「は、はい」
筆者が先導する形で地下への階段を降りていく。
「よく新宿には来るのかな?」
「は、はい。お買い物とか食事とかで…」
「それじゃあ、知り合いに見られないように気をつけないとね」
「そ、そうですね」
「じゃあ、こうしようか。俺はこのままイズミちゃんの2、3歩先を歩くから、その後をついて来てくれる?」
「えっ? あっ、はい」
「おっと、そうだった! 実物の俺はこんな感じだけど、大丈夫かな?」
「な、何がですか?」
「ほら、スケベが服を着て歩いているような感じでしょ、俺って? ドン引きしてない?」
「そ、そんなことないですよぉ」
「それじゃあ、このままホテルに向かうってことでいいのかな?」
「は、はい。それでお願いします」
「了解! それじゃあ、俺の後をついて来てね」
こうして、縦列隊形でホテル街に向かうことになった。
この隊形だと会話が思うようにならない。相手に何か伝えようとすると、いつもより大きな声を出さなければならないからだ。
そんなことしたら嫌でも周囲の注目を集めてしまうので、無言で歩き続けるしかない。
その後、無事にラブホテルにチェックインし、部屋でふたりっきりになる。
「ふぅ。やっと落ち着けるね。とりあえずお茶でも飲もうか?」
ここに来る途中に自販機で購入したお茶を飲みながらおしゃべりを開始する。
ちなみに、筆者はデートの際に必ずお茶を購入するようにしている。以前はコーヒーだったが、口臭のことを考えてカテキンが含まれるものにしたのだ。