「それじゃあ、このままホテルに向かうってことでいいのかな?」
「は、はい。ショーイチさんさえよければ、それでお願いします」
「えっ、俺? もっちろんOKだよ」
「ほ、本当ですか?」
「うん! アイカちゃんが書いていたように詮索とかもしないから安心してね」
「は、はい。ありがとうございます」
いつもならここで「可愛い」だの「セクシー」だのと褒めるところだが、嘘をつけない筆者は、アイカちゃんの容姿に触れることなく会話を進めた。
こうして、ホテル街に向かって歩き始めることに。
「もしかして、ああいうサイトで遊ぶのは初めてなのかな?」
「は、はい」
「やっぱり怖いでしょ? こういう風に見ず知らずの男と会うのって」
「はい。どんな人が来るのかまったく分からないので…」
「俺のことも怖いって思ってた?」
「い、いいえ。メールの内容がすごく優しそうだったし、すぐに写真も送ってもらえたので怖いとは思わなかったです」
「それは良かったぁ。でも、いろんな人がいるから気をつけてね」
「えっ?」
「ほら、ホテルに入ってから相手の背中に入れ墨があることに気づいたり、腕に注射痕がたくさんあったりしたら怖いでしょ?」
「そ、それは怖いですね」
「だから、見た目が優しそうでも気をつけなきゃダメだよ」
「は、はい」
「あっ! 俺は正真正銘普通のエロいおっさんだからね。タトゥーも注射痕も何もないからさ」
「フフフ。はい」
そうこうしているうちに目的のラブホテルに到着。無事にチェックインし、部屋でふたりっきりになる。
ぐぬぬぬぬッ。
明るい室内で改めてアイカちゃんの顔を見て、眉間に縦じわが浮かびそうになった。
我々“非モテ”人種は、相手の表情の微妙な変化を敏感に察知する能力を持つものが多い。筋金入りの非モテの筆者は、その能力に特に秀でている。
今回は相手も同じ“非モテ”のはずなので、表に現れてしまう感情を悟られないよう注意が必要だ。
意識して口角を少しだけ吊り上げる。表情筋がそこに集中するので、眉間に縦じわができにくくなる。その表情をキープすることを心がけて、エッチな会話を開始する。