「ずいぶん偏ってるんだね。そういう職種なのかな?」
「広告代理店なんですけど、なぜか若い人がいないんですよ」
「そうなの? 広告代理店っていうと、ネットに強い若い人が多そうなイメージだけど」
「それがそうでもないんですよ。うちの会社はちょっと変わったクライアントが多いので…」
あまり詳しくは書けないが、たしかに彼女の勤める会社はニッチなところを攻めているので、若い人が少ないことに納得できた。
「それにしても、本当に可愛い顔してるね」
「そ、そんな真面目な顔して褒めないでください」
「褒めたりなんかしてないよ。目にして感じたことを正直に伝えているだけだよ」
「か、可愛くなんかないです!」
「いやいや、お世辞じゃないって! テレ朝の武内絵美に似てるって言われたことあるんじゃない?」
「えっ?」
「ほら、女子アナの武内絵美だよ」
「え、えっとぉ、分からないです」
武内絵美がMステの司会をしていたのは、15年以上も前のことだ。若い人が知らなくても当然なのかもしれない。
「武内絵美ってのは、俺が一番大好きだった女子アナなんだ。だから、アキコちゃんみたいな顔も大好きなんだ!!」
「え、えっと、ありがとうございます」
「あっ、ごめんね。ひとりで熱くなっちゃって。そろそろシャワー浴びようか?」
「は、はい」
その後、別々にシャワーを浴び、ベッドインすることに。
「それじゃあ、俺のほうからご奉仕させてもらうね」
「は、はい」
「痛かったり、嫌なことがあったらすぐに教えてね」
「わ、分かりました。お願いします」
キスするために顔を近づけていくと、アキコちゃんはこちらを真っすぐ見つめてきた。
ん? いきなりガン飛ばしてきたな!?
そのままキスしても良かったのだが、こちらも負けじと彼女を見つめる。
5秒、10秒…。それでも目を逸らさないアキコちゃん。
あぁ、本当に可愛い顔してるなぁ…。
筆者は真面目な顔を作っていたが、間近でアキコちゃんの顔を見ているうちに、どんどん顔の筋肉が緩んでいった。
ま、まずい! このままでは不細工な顔を見せてしまうことになる!!
ガン飛ばし合戦に負けたくなかったが、渋々キスを仕掛けることにした。