「K美チャンはコーヒーと紅茶、どっちか好きかな?」
「え?」
「来る途中、自動販売機で買ってきたから好きなほうを選んでくれる?」
「あ、あの、す、すいません。気を使ってもらって…」
「気なんて使ってないよ。俺が飲みたかったから買ってきただけだよ。俺はどっちも好きだけど、K美チャンはどっちにする?」
「そ、それじゃあ、紅茶をいただきます」
「はぁい。どうぞ」
ブルゾンのポケットに入れていた紅茶を彼女に手渡す。筆者はコーヒーを飲み、お互い軽く喉を潤したあと、本格的におしゃべりを開始した。
「メールに書いてあったけど、ずいぶん前から俺のことを知ってたんでしょ?」
「は、はい。3年くらい前にネットで見つけて、それからは毎週読んでます」
「ま、毎週?」
「はい。あのサイトの他の記事は読んでないんですけど、ショーイチさんのだけを楽しみにしてます」
「あ、ありがとう。でも、あの記事はスケベな男性向けのものだから、読んで引いたりしてない?」
「いいえ。いつも面白いし、出て来る女性がうらやましいなぁって思ってました」
「そんなに長期間読んでくれて、ありがとうね」
「こ、こちらこそありがとうございます。な、なんだか夢見てる気分です」
「そんな上等なもんじゃないって。俺なんかただのスケベなおっさんなんだから」
「ほ、本当にショーイチさんってお若いんですね。わ、私よりも年下に見えます」
「ありがとう。でも、K美チャンだってすっごく若く見えるよ。小っちゃくて可愛いから、ポケットに入れて連れて帰りたいくらいだよ」
「そ、そんなぁ。き、急に褒められると、こ、困ります」
「あれ? 俺の記事をたくさん読んでるんだよね? だったら、俺が正直者だってのは分かるでしょ?」
「は、はい」
「ほら、俺のスケベそうなこの顔を見てごらん。あれこれ計算しながらしゃべれるほど利口そうじゃないって分かるでしょ?」
「え?」
「思ったことを口にしているだけだから、疑ったりしないで100パーセント真実だと思ってよ」
「は、はい。分かりました」
そろそろエッチな話題に切り替えたかったが、K美チャンはまだまだ緊張している様子。ということで、もう少し遠回り気味な会話を続ける。
「横浜にはよく来るの?」
「い、いいえ。10年くらい来てませんでした」
「それじゃあ、どうしてここに決めたの?」
「な、なるべく知り合いのいなさそうなところにしたかったので…」
「なるほどね。そうじゃないかなぁって思ってたよ」
「わざわざ遠くまで来てくださってすみません」
「ん? 遠くじゃないよ。地下鉄で来たから、乗り換えなしの1本で着いたからさ」
「そ、そうだったんですね」
「うん。読みたかった本を車内で読んでたから、あっという間だったよ」
喫煙OKの部屋をとってくれたり、移動時間を気に病んでいたりと、K美チャンはかなり気遣いのできるタイプのようだ。
悪い気はしないが、女性読者を相手にする場合、こちらが気を遣いまくって気持ち良くなってもらうのがトコショー流デート。このままでは本末転倒だ。
この辺りでエッチな話題に切り替えるべきだと判断した。