こ、こいつ、できる!!
笑顔は女性にとって最大の武器だ。筆者のような非モテ野郎は実生活で女性の笑顔に触れる機会が皆無なので、軽くほほ笑まれるだけでコロッと参ってしまう。
こちらも、釣られるような形で不細工な笑みを浮かべた。
ハッ! これはアカン!!
自分のことは自分が一番よく分かっているつもりだ。
女性を目の前にした時の筆者の笑顔は、スケベという文字が視認できそうなくらい下卑たものだと理解している。
慌てて奥歯を噛みしめ、笑顔を打ち消す。かといって、しかめっ面で挨拶するわけにもいかない。
ということで、顔の神経を総動員させ、穏やかそうな表情に作り替える。この表情筋のコントロールにはそれなりに自信があるのだ。
「こんばんは。ナツミちゃんかな?」
「あっ、はい。そうです」
「さっき約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
挨拶しながら彼女が履いている靴を確認。ヒールがほとんどない靴だった。つまり、素の状態で身長171センチの筆者と同じくらいの背丈ということだ。
こういう女性を相手にする場合、身長の話題を振らないほうが無難だろう。背の高さに驚いているそぶりすら見せず、会話を続ける。
「このままホテルに向かうってことでいいかな?」
「はい。もちろんです」
「大丈夫? 無理してない?」
「え?」
「ほら、この通りすっごいスケベそうな顔してるでしょ? 写メと違うから引いたりしてない?」
「そんなぁ。全然普通じゃないですか?」
「え? 俺が普通? とんでもない! ほら、よぉく見てごらん?」
「フフ、ショーイチさんって奥二重なんですね」
「う、うん」
「私は全然平気ですよ。ショーイチさんのほうこそ、私みたいなので大丈夫なんですか?」
「もっちろんだよ! 本当はダッシュしてホテルに行きたいくらいなんだから」
「フフフ、ダッシュですか」
「うん! それじゃあ、行こうか?」
「はぁい」
ナツミちゃんは、しっかり会話のキャッチボールができるコだった。元風俗嬢ということで、スケベな男の扱いに長けているのかもしれない。
ホテルに向かって歩きながら、リサーチすることにした。