彼女の声を聞き、彼女が住んでいる街、息子の部活動のこと、旦那さんの職業などといった記憶がどんどん蘇ってきた。
だが、ここでそれらの記憶を得意げに話すのは避けた。詳しく覚えていることを知られると、レイコちゃんが引いてしまうかもしれないからだ。
そこで、当たり障りのない会話をしながら様子をうかがうことにした。
「レイコちゃんに覚えてもらっていて嬉しいなぁ」
「こちらこそ、急に誘っちゃってゴメンなさい」
「謝ることないって。いつでも連絡してって言ったよね?」
「は、はい」
「だから、昨日連絡もらえて、すっごく嬉しかったよ」
「フフ、ありがとうございます。私も嬉しいです」
「あれから、エッチはしているの?」
「え?」
「半年前に俺としてから、旦那さんとか他の男性とかとエッチした?」
「い、いいえ。そういうのはまったくないです」
「それじゃあ、半年ぶりなんだぁ」
「は、はい」
「今日はゆっくりできるのかな?」
「20時くらいに新宿駅に着いていれば大丈夫です」
「了解! それじゃあ、絶対に時間に遅れないよう気をつけるから安心してね」
「フフ、やっぱりショーイチさんって優しいですね」
「え?」
「前回も私の帰宅時間のことを気にかけてもらえていたので…」
「そうだっけ?」
「はい。たくさん気遣いしていただいて、安心できました」
「う、うん」
レイコちゃんのほうは、しっかり記憶に残っていたようだ。まぁ、それもそうだろう。彼女の言葉を信じるなら、この半年間セックスレスだったことになるので、最後の相手として筆者のことをよく覚えていても不思議ではない。
そうこうするうちにホテル街に到着。いつも筆者が利用している、中ぐらいのクラスのラブホにチェックインした。