そうこうしてるうちに、Bに到着。入り口をくぐり、フロントに空き部屋状況を確認する。すると、グレードの高い部屋なら今すぐ入れるとのことだった。
ギャラが振り込まれる前で、懐はかなり淋しい状態だったが、今からホテルを変えるのはあまりにもカッコ悪い。
その他の空き状況を確認すると、一番グレードの低い部屋が30分ほどで入室可能だと教えられる。
30分は結構長いが、それくらいならギリギリ許容範囲だろう。30分待つことをフロントに告げ、少し離れて待っていたアヤメちゃんの元に戻る。
「少し待てば大丈夫みたいだから、ソファに座っていようか?」
ソファにふたり並んで座り、おしゃべりを再開させた。
「大丈夫? エアコン寒すぎない?」
「だ、大丈夫です」
「外は暑かったけど、ここはちょっと寒いくらいだね」
「そうですね。でも、暑いの苦手なので、これくらいがちょうどいいです」
「それなら良かった」
「で、でも、このホテル、すごいですね」
「え?」
「ここ、待合室っていうんですか? ソファとかも豪華だし…」
「うん。なんだかグアムとかバリにありそうな感じだよね」
「そうなんですか。行ったことがないので分からなかったです」
「俺も社員旅行で数回行ったくらいだけど、こんな雰囲気だったよ」
「な、なんだか緊張してきました」
「え? どうして?」
「こういう高級そうなところ、初めてなので」
「大丈夫だって。そんなに高級じゃないから安心して」
「は、はい」
待合室が広くて豪華すぎたのか、アヤメちゃんは必要以上に萎縮しているように見えた。
これでは、せっかくの高級ラブホが逆効果になりかねない。ということで、またもや話題を変えることにした。
「それにしても、アヤメちゃんってモテそうだよね?」
「え?」
「彼氏とかいないの?」
「そ、それは…」
「あ、ゴメン、ゴメン。そういうのって、話しにくいよね?」
「は、はい」
再び地雷を踏みそうになってしまった。もっと慎重に話題を選ばなければ。
「よく新宿には遊びに来るの?」
「いいえ。あまり来ないですね」
「そうなんだぁ」
会話が続かないし、まったく盛り上がらない。
待合室には筆者たち以外のカップルもいたので、エロい話を堂々とすることも気が引けてしまう。
会話が途切れ、ふたりの間に微妙な雰囲気が漂い始めてしまった。
平静を装いながら焦りまくる筆者。すると、ここでフロントに呼ばれ、ようやくチェックイン作業を行うことができた。
ルームキーを受け取り、アヤメちゃんと一緒に部屋に向かう。