ほぼ約束の時間に、ユウナちゃんからメールで伝えられていた服装の女性を発見した。
ぐはっ!!
その女性は、お笑いトリオ・森三中の黒沢のようなどっしり体型だった。
ただの偶然であってくれぃ!!
たまたま同じ服装の、別の女性の可能性だってあるハズだ。しかし、周囲には他にそれらしき女性はいなかった。
でも、もしかしたら、ユウナちゃんの到着が遅れているだけかもしれないではないか!
そんなことを考えながらその女性にチラチラ視線を送っていると、目と目が合ってしまった。こうなったら無視することはできない。
ゆっくり近づいていくと、徐々に顔立ちがはっきり分かるようになった。彼女の顔は、1986年にデビューしたアイドル・島田奈美をずっとずっと地味にした感じだった。
決してブサイクではないが、なんだか負のオーラが漂っていて、あまりお近づきになりたくないタイプに思えた。
ふたりの距離が数メートルにまで近づくと、その女性は筆者の目を見ながら会釈してきた。
筆者も服装をメールで伝えていたので、彼女もこちらを認識したのだろう。
よしっ! 今日は罰ゲームデーだと思うことにしよう!!
回れ右してダッシュでその場を後にすることもできたが、覚悟を決めて話しかけることにした。
「こんばんは、ユウナちゃんかな?」
「は、はい」
「さっき、【ワクワクメール】で約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「は、はい。こちらこそ…」
「じゃ、このままホテルに向かうってことでいいかな?」
「は、はい」
我ながらなんて分かりやすい反応なのだろう。可愛いコや綺麗な女性が相手だとペラペラよく動く舌が、そうでないケースの場合は、めちゃくちゃ重くなってしまうのだ。
彼女の歩調に気を配りながら、常に半歩先を歩いてホテル街に向かう。
このまま余計な気を遣わず、さっさとやることだけやって終わりにしたいものだ。しかし、無言のまま事を運ぶのは、それはそれで気疲れしてしまう。仕方なく歩調を緩め、会話することにした。