待ち合わせ場所は、新宿アルタ前。正月なので人混みでごった返しているかと思ったら、いつも以上に人が少なくて拍子抜け。ただ、そのぶん待ち合わせには向いていた。
いつものように、街行くおデブちゃんや不細工ちゃんを脳裏に焼き付け、イメージトレーニングを開始する筆者。こうしたイメトレがあればこそ、少々のハズレが来ても揺るがない精神状態を構築できるのだ。
そうこうするうちに、ほぼ時間通りにマリナちゃんがやって来た。
ウヒョっ! こりゃあ正月早々縁起がいいぜ!!
一目見て勝利を確信する筆者。マリナちゃんは女優の吉瀬美智子を少し地味にした感じの顔立ちで、髪型は目が覚めるようベリーショート。身長は160センチ近くあり、スレンダー体型で、パッと見は完全にモデル。クールビューティという言葉が似合う、文句のつけようがない外見だった。
顔の筋肉が緩まないよう気合いを入れた筆者は、ゆっくりと彼女に近づき声をかけた。
「こんにちは、マリナちゃんだよね?」
「は、はい」
「さっき【ワクワクメール】で約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「あっ! ショーイチさん、今日はありがとうございます」
「ありがとうはこっちのセリフだよ。正月早々こんな綺麗なコに会えて、すっごく嬉しいよ」
「えっ?」
「いきなり正直過ぎたかな? でも、俺って女性の前で嘘がつけないタチなんだ」
「そ、そんな。褒めてもらうことがあまりないので、恥ずかしいです」
「だから褒めてないって。正直に気持ちをクチにしただけだよ」
「…ありがとうございます」
褒め慣れていると予想したが、ウブな反応に少々驚いてしまった。
それにしても実に可愛らしいではないか。これならコチラも気持ち良く道化に徹することができそうだ。
ホテル街に向かって歩きながら会話を続ける。
「東京に来てるのは、実家がこっちにあるとかなのかな?」
「いいえ。生まれも育ちも福岡です」
「そうなんだ。全然訛りがないからコッチの人だと思ったよ」
「東京には年に数回くらいしか来ないんですけど、仕事で標準語を使ってるからですかね」
「なるほどね。じゃあ、友達や家族としゃべる時は方言なの?」
「そうですね」
他愛もない話をしながら歩いていると、いつも以上にすれ違う人たちの視線を強く感じた。マリナちゃんの見た目は、否応なしに人目をひいてしまうようだ。もちろん、いい意味で、だ。
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