待ち合わせ場所は、池袋駅地下の“イケフクロウ”の前だ。本当ならこんな混んでいる待ち合わせスポットではなく、ラブホテル街に近い池袋駅北口付近にしたかった。しかし、ヒサコちゃんがあまり池袋に詳しくないとのことで、仕方なくこの場所になったワケだ。
約束の時間の10分前に到着し、ソワソワしながら待っていると、5分ほどでヒサコちゃんらしき女性が現れた。
ニガっ!
彼女を一目見た瞬間、口内の唾液がとんでもなく苦味をもったように思えた。その場で華麗に180度ターンして、Bダッシュで駆け出したくなってしまった。
彼女の顔は、ぽっちゃりタレントの内山信二をほんのり女性っぽくした感じだ。
まっ、それだけならブ厚い脳内フィルターで、愛嬌のあるコだなぁと思えなくもない。しかし、その顔の下の体型も強烈すぎた…。
内山信二の遥か上を行っていたのである!!
こりゃ無理ゲーだわ。そうやって断ることは簡単だ。しかし、こういうモンスターを相手にした経験が非常に大事なのである。その経験が強烈であればあるほど、出会える系遊びで“中の下”や“下の上”クラスの女性と遭遇しても楽しめるようになるからだ。
それに、ちょっとした打算も働いた。これだけ見た目がアレだと、顔パスされたり遠くから逃げられたりするのが茶飯事だろう。そんなコに優しく接してあげれば、案外もの凄いエッチなことができるのでは、と。
そんなことを刹那に考え、口内の唾液は苦いままだったが、覚悟を決めてヒサコちゃんに近づき声をかけた。
「こんばんは、ヒサコちゃんかな?」
「あっ、はい。そうです」
「さっき【ワクワクメール】で約束させてもらったショーイチだよ。今日はよろしくね」
「あ、あの。は、はい」
「ん? 緊張してるのかな?」
「は、はい」
「大丈夫。ヒサコちゃんの嫌がるようなことは絶対にしないから安心してね」
「そ、そうじゃなくて。わ、私で大丈夫ですか?」
やはり、顔パスされ慣れているのだろう。心の中で、大丈夫じゃねぇよと突っ込みながら、何食わぬ顔で聞き返す。
「ん? 大丈夫って何が?」
「や、あの、私みたいなので平気ですか?」
「もっちろんだよ。今日はふたりで楽しんじゃおうね」
「ほ、本当ですか?」
「あっ、もし俺が嫌だったら、この場でゴメンなさいしていいからね」
「そ、そんなことないです!」
「よかったぁ。じゃ、さっそくだけど行こうか?」
「は、はい」
こうして池袋駅の地下構内を縦断し、北口を目指すことに。この際、いつもより女性と距離をとって歩いたことはココだけの話である。