いつものように待ち合わせ場所に先着した筆者が待っていると、約束の時間より数分早くナナミちゃんがやってきた。
ぐぬぬぬぬぬぬぬっ!
彼女を一目見た途端、クチの中の唾液が苦くなってしまった。ナナミちゃんの顔は、お笑いタレントのキンタロー。と卓球選手の伊藤美誠を足して2で割ったような微妙な感じ。立派すぎるエラが激しく自己主張していて、ホームベースみたいな輪郭だったのだ。
おいおいおいおい! この顔でガールズバーってか!?
三十路過ぎの女性とはいえ、ガールズバーで働いているのだから“そこそこの見た目”を期待していた筆者。その期待を裏切られ、臍下丹田がカーっと熱くなってきた。
だが、ここでゴメンなさいするような筆者ではない。どんなに見た目が難アリでも、絶対にどこか一つくらいは人より優れているところがあるハズだ。
そこで、彼女に話しかける前に自己暗示をかけることにした。
よく見ればももクロの有安杏果に似てるんじゃネ? だったら余裕でアタリじゃネ?
おたく気質で内向的な筆者なので、自己暗示にはちょっとばかり自信アリだ。そのおかげですんなりと気持ちを切り替えることに成功。
穏やかな笑顔で彼女に近づいていき、話しかけた。
「こんばんは、ナナミちゃんかな?」
「あ、はい。そうです」
「さっき【イククル】で約束したショーイチだよ。今日はよろしくね」
「は、はい。よろしくお願いします」
ホッ!
このツラで不愛想だったら最悪である。しかし、一応それなりのコミュニケーション能力はありそうだ。ま、ガールズバーで働いているくらいだから、当然といえばそうかもしれないが。
「じゃ、行こうか?」
「あ、はい」
相変わらず容姿の劣る女性にはヤケに強気なトコショー。スケベな笑みではなく、穏やかな笑みになるのも余裕の表れだろう。
ラブホに向かう途中の自販機でふたり分の飲み物を購入し、安普請のラブホにチェックイン。