
テレビをつければ必ず出ている芸能人。だが彼らがテレビに出るまでには、その前にオファーした芸能人の「出演NG」も存在している。分かりやすいのがドラマである。ある俳優にオファーしたものの内容やスケジュールによって出演がNGとなることもある。
伊集院光が『踊る大捜査線』(フジテレビ系)に深津絵里のストーカー役として出たとき、台本に貼られていた修正テープをはがすと、そこには元子役タレントの内山信二の名前が書かれていた…というネタのようなエピソードをその当時よく話していたが、まさにそうした多くのタレントの出演NGの末に、「出演タレント」が決まるのだ。
バラエティ番組も同様のようで…。レイザーラモンRGが「あるある」ソングで、「ローラがスケジュールNGなので、同じ事務所のダレノガレ明美を推してくる」と歌っていたが、果たしてこういうことは起こり得るのだろうか? 業界関係者に聞いてみた。
「本当です。芸能事務所は、所属タレントがある程度売れてくると、タレントのブランドを高めるために出演番組を選ぶようになります。ただ断わる代わりに、他の所属タレントにも仕事が回ってくるように、『代わりにイイのがいますよ』とプッシュしてくるんです。ダレノガレの例で思い出しましたか、『藤本美貴はダメだけど、ウチの事務所には、長期ロケなど使い勝手が良い加藤紀子もいますよ』と言われたこともあります」
そんなタレントのステップアップ以外に、どんなNG理由があるのか?
「たとえば志村けんさん。彼はクイズ番組NGです。ご本人としても無駄に学力のことで揶揄されたくないのでしょう。そもそも、当然ながら知性派といった売り方ではありませんし(笑)。ジャニーズ事務所もそういう傾向はありますね。番宣で出なければならないときもありますがそれは特例です」
タレントが出ているCMのスポンサーとの兼ね合いもあるようだ。特に気を付けているのが健康食品や医薬品だという。
「スポンサーがライバル会社で、商品が競合している場合は出演できません。また、健康法や食事なども紹介されるのをイヤがります。健康食品がスポンサーの番組に中井貴一さんをオファーしたのですが、『ミキプルーン』のCMに出演しているのでと断られたそうです」
また、番組ぐるみで「NG」を約束させることもあるという。
「ロンブー田村淳の電撃結婚を発表した『ロンドンハーツ』は、プライベートに密着したい、いわゆる『おいしい』タレントを囲って、他番組などにプライベートを露出させない密約を取り決めています。分かりやすくいえば、家族の顔出し。ロンブー亮のお子さんや狩野英孝の結婚相手もそうでした」
出ることがタレントとしての人気のバロメーターなのだが、一様にタレントが出るのをイヤがる番組があるようだ。
「『あの人は今』ですよ。80年代に元祖メガネタレントとして一世を風靡した斉藤ゆう子(現・斉藤祐子)さん。彼女は現在、声優として活躍しています。そんな彼女に『あの人は今』に出ませんか?と言ったら、『内容NG』と言われました。タレントとしてはその後不遇だったけれども、今は転身を遂げて第2の人生を送っていることをアピールしたい人もいれば、そもそもそういう番組に出るのがイヤな人もいるのです」
バラエティ番組でよくある「自宅公開」。これに関しても「NG」というタレントもいる。
「本人のキャラクターで豪華な自宅を見せたくないという人もいますし、最近は防犯上の問題も出てきています。そういえば、かつて『いいとも青年隊』のあるメンバーに自宅を見せてほしいと言ったら、今はもう稼げないのでマンションを引き払い、すでに実家に住んでいるので止めてくれと言われた人もいました」
テレビの世界に渦巻く「出演NG」。そこには我々の知りえない悲喜こもごもの理由があるようだ。今、アナタが見ているテレビ番組で笑いを誘うタレントも、もしかしたら誰かの「代役」として出ていたりして!?
(文=吉井俊祐)