賛否渦巻く深夜のテレ東バラエティー 斬新かそれともパクリか!?

trialseven0720.jpg※画像は『トライアル7』公式HPより

 テレビ東京の深夜バラエティーがネットを中心に話題を集めている。といっても、『ゴッドタン』や『くだまき八兵衛』など、既存の人気レギュラー番組が注目を浴びているのではない。対象となっているのは、テレビ東京が今週の月曜日から「トライアル7」と題して4日間連続で放送している実験的バラエティー番組だ。

 18日の初日には、07年の年末に単発で放送されたバナナマン司会の『マモレ!絶滅ニンゲン』が放送され、内容に新鮮なところはなかったものの、元モーニング娘。の紺野あさ美がアシスタントに抜擢されるなどして注目を浴びた。と、ここまでなら元アイドルという境遇の新人アナウンサーが本格的にバラエティーに進出したというニュースで終わるところだが、昨夜放送された『ジョージ・ポットマンの平成史』という番組が曲者だった。

「現在進行型歴史番組 テレビ東京・イギリスCBB共同制作」という、いかにもふざけた冠をつけた『ジョージ・ポットマンの平成史』。すでに4半世紀に迫ろうかという平成を振り返り、大胆な仮説で知られるヨークシャー州立大学歴史学部教授のジョージ・ポットマン(=日本近現代史専攻)が海外の研究者ならではの視点で調査するという番組だ。

 その内容は平成の「音楽史」「ファッション史」「オネエ史」を振り返るといったもので、IKKOやNMB48、岡本夏生、Rioといったタレントが各ジャンルの証言者として出演。

 音楽史では、めっきりミリオンセラーのなくなった今の音楽市場を「平成時代の歌は、瞳閉じすぎ・会いたくて会えなすぎ・眠れない夜多すぎ?」と称し、カラオケの流行に乗じて、アーティストたちがこぞって若者に受けるようなフレーズを連発したため、結果として似たような曲が多くなりCDが売れなくなったと分析。

 また、ファッション史ではブルマーを取り上げ、「なぜブルマーは平成時代に消えたのか?」を調査。専門家によると、高度成長時代の学校理念として我慢や努力というものがあり、その象徴としてブルマーを履かせたと解説。物質的に豊かになった現代では、女子にとって我慢や努力というものが必要なくなったという。

 そしてオネエ史では、今の芸能界を席巻するオネエタレントに注目。「なぜ平成時代 オネエが大人気なのか?」という疑問に、メイク技術の向上と、彼女たちの使う言葉には世間の人々に受け入れられやすいという性質があることを指摘する。

 以上、番組の内容を簡単に振り返ってみたが、どれも興味深く面白い説だが強引な印象なのは拭えない。だが、その大胆さやでたらめ具合がネットで話題になったのではない。ネットユーザーたちが注目をしたのは、この番組が20年以上も前に放送されたある深夜番組に酷似しているからだ。その深夜番組とは『カノッサの屈辱』(フジテレビ系)のこと。

 1990年の春から約1年間放送された『カノッサの屈辱』は、当時、80年代後半から続くフジテレビ深夜番組黄金期を代表する名プログラムとして、今でも根強い人気がある番組のひとつ。番組放送作家の1人に『おくりびと』(松竹)で日本映画界を代表する監督にまでなった小山薫堂が名を連ねている。そんな『カノッサ』とは、当時の現代消費社会を代表するあらゆるものを(たとえば「律令ディスコ国家の成立と文化」や「TVドラマ東西ローマ帝国の零落と復権」のように)半ば強引に歴史の事象になぞって解釈し、あたかも研究発表のように紹介する番組。

 この『カノッサ』は、メイン司会を務めた俳優の仲谷昇の生真面目な印象と相まって、深夜のバラエティ番組でありながら教育番組のような印象を獲得することに成功。内容も一流のジョークとして受け止められ、数々の番組でパロディがなされるほどの人気を得た。そして、そんな伝説的な番組と手法が同じではないかと注目を浴びているのが昨日放送されたテレビ東京の『ジョージ・ポットマンの平成史』だ。

 しかし一方で、昨夜の放送を見た視聴者の中には、ドキュメンタリータッチで放送する『平成史』に対し「こういう番組って珍しいから新鮮」や「斬新な企画だ。レギュラー化を望む」といった声も多い。こういった発言をする視聴者の世代は確実にはわからないが、前記した『カノッサ』をライブで見ていない世代だろうことは想像できる。20年以上も前の番組なのだから、各世代に反応の違いが出るのは仕方がないのだろう。

『24』や『CSI』シリーズなど、海外ドラマを積極的に放送するテレビ東京だが、先クールに放送された『鈴木先生』は視聴率で低迷したものの業界内外から高評価でネット配信では30万回以上の再生を記録し、国内ドラマで1位を獲得。さらに、先日始まった『勇者ヨシヒコと魔王の城』はドラクエ風のドラマという斬新な設定で放送前から話題を集めた。バラエティでも『ゴッドタン』や『やりすぎコージー』といった確実でコアな人気のある番組が並ぶテレビ東京。関東ローカルという1地方局でありながら、キー局に引けを取らない刺激的な番組の数々は今後も見逃せない。いや、地方局であるからこそ斬新な企画が通るのかもしれない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

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