「ミトカナイトフジ!」は本当に見とかないとダメ? 連発される豪華バラエティーの謎

mitonanaito0530.jpg※画像は「ミトカナイトフジ」公式HPより

 今週相次いで放送されるフジテレビのバラエティー特番に注目が集まっている。

 ”ミトカナイトフジ!”と題して展開されるフジテレビのバラエティー特番。月曜夜には、『ネプリーグ』が『ネプ大リーグ』として中山美穂やK-POPアイドルを迎え、火曜には毎回注目度の高い『歌がうまい王座決定戦』をイケメンバージョンで放送。水曜は島田紳助率いる『ヘキサゴンⅡ』が、いっこく堂らを出題者に迎え超クイズパレードを予定。木曜こそ通常放送ながら金曜日には『ペケポン』が目玉企画の「ターンテーブル」「MAX敬語」「川柳」という豪華3本立てで放送。土曜には、長年フジテレビの看板バラエティーとして君臨する『めちゃイケ』が2時間の特番で、日曜にはダウンタウンとナインティナインの14年ぶりという共演が話題に上った『大日本アカン警察』がSP特番を放送。この連日連夜の特番攻勢は、まさに”ミトカナイト”と銘打つだけあって盛りだくさんのようだ。しかしなぜ、番組改変期でもなければ祝日などもないこの時期に、フジテレビはこれだけ多くの特別番組を編成したのだろうか。

「一言で特番といっても、そこには2種類のものがあると言えます。1つは、開局○○周年などといったような時に作られる本気の特番。例えば今年はTBSが開局60周年ですが、その際に放送される番組は、木村拓哉を主演に迎えたドラマ『南極大陸(仮)』で、まさに本気の特番と言えるでしょう。他にも、日テレの24時間テレビやフジの27時間テレビなどは、それぞれ社のプライドを懸けた本気のものと言えます。しかしもう1つの特番というのは、潤沢な予算を与えられている本気の特番と違い、制作費を抑えるため半ば強引に作られているものと言えます。つまり、通常の放送枠が1時間の番組の制作費が2,000万円だとして、その2時間特番を作ろうとした場合、掛かる制作費は3,000万円程度で済むということです。当然、出演者のギャラは割安になりますし、人件費の面でだいぶ抑えられるわけです」(業界関係者)

 さらにこの関係者は、こういったケースの特番は「特に人気のバラエティー番組に多い」と指摘する。

「長引く不況に、どこの局も番組制作費の削減は課題ですからね。かといって、番組のクオリティーをあからさまに下げるようなマネはできません。そんなわけで、ここ最近特番が多いのは、制作費を抑えながらSP感を演出できるといった、まさに一石二鳥の作戦というわけです」(前出)

 確かにひと昔前までは、特番といえば番組改変期でしか見られない、まさに特別なものだった。にもかかわらず、ここ最近では毎日のように特別番組が放送されている。もはやどこにも特別な印象などないに等しい。それでも局側が特番を乱発しなければならないのは、この関係者が明かしてくれた制作費の削減という懐事情のためなのだろう。

 冒頭では、相次ぐフジテレビのバラエティー特番を記したが、なにも今週はフジテレビばかりが特番を放送するわけではない。例えば、日本テレビは、エコ関連をテーマに人気バラエティー4本をSPバージョンで放送する予定だし、TBSは「人間とは何か……!?」と大それたキャッチコピーの『アースコード』という特別番組を予定。通常放送とは異なる『アースコード』は、いわば前出の関係者言うところの”本気の特番”と言えるのかもしれない。さらにテレビ朝日はバラエティー2本の特番とサッカー日本代表の試合を放送する。先ほども記したが、もはやここまで毎日のように特番が放送されると、なにが特別なのかよく分からない。

 かつてテレビが娯楽の王様だった時代の特番といえば、指折り数えて待ち望むほど楽しみなものだった。すでにテレビが娯楽の中心から退いて久しいが、その一因には、上記したような、制作費を抑えるためにまやかしのように特番を作るという安易な考え方があるのではないか。クオリティーを下げずに制作費を抑えることが必要なら、知恵を絞るしかないだろう。

 テレビバラエティーに革命をもたらしたディレクターのテリー伊藤。彼のアイデアを支えたのは、実務に奔走したADの高橋がなりだった。彼は、テリー伊藤の生前葬で「トラだろうとワニだろうと蛇だろうと、どんな猛獣をそろえろと言われても一銭も経費を使わなかった」という。彼は、途方もないテリーのアイデアを実現させるため、動物プロダクションに依頼すれば数百万から数千万は掛かる費用も、直接動物園や飼育施設に企画を持ち込み、何らかのタイアップを取り付ければタダで撮影できたと語る。

 乱発される特番の数々はテレビの価値そのものを下げている。もう一度テレビがかつての黄金期を取り戻すには、テリーやがなりのように、制作費うんぬんではなく、自分が面白いと直感したことをガムシャラに追求するような人々が必要なのかもしれない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

『テリー伊藤のテレビ馬鹿一代』

 
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